イベントレポート

2015.01.05(月)

第2回 子ども・子育てタウンミーティングを開催しました

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一段と寒さが厳しくなってきた12月5日、美しが丘東小学校・図書室にて「第2回子ども・子育てタウンミーティング」が開催されました。今回講師としてお招きしたのは「コミュニティと子育て」の分野で多数の著書を出版されている武蔵大学人文学部教授・武田信子先生です。

講演のときは、いつもその場その場で何を話すのかを決めるという武田先生。はじめに、ご自身の子育ての経験を交えて、海外の教育の実状、日本の教育の実態を少しずつ、紐解いてくださいました。

これからの子育てと教育を考える

東京の保育園では子育てが難しいと思った武田先生は、都心から1時間半の、広い敷地をもつ郊外の保育園に子どもを通わせることにしました。その後、大学の特別研究員としてカナダに一年滞在し、日本人学校ではなく現地の学校へ通わせることを選択します。さらに7年後にも一年、オランダに滞在し、子どもたちと一緒にヨーロッパをバックパッカーとして旅したこともあるのだそうです。とても自由でオープンな子育てをされています。

たとえばカナダでは、成長すればするほど子どもたちは発言するようになるそうですが、日本は逆で、年を重ねれば重ねるほど発言しなくなります。

「一列に並ぶことを大切にする日本の教育は、高度経済成長期においては、一定の成果がありました。しかし高度経済成長期が終わり、その役目を終えた今、教育は別の方向へとシフトしなければならないのではないでしょうか?」と武田先生。

私たち大人が子どもの頃にした楽しい体験を、今の子どもたちは体験できていますか?

その後、参加者の自己紹介を兼ねたワークが行われました。それは、4つのグループに分かれたあと「子どもの頃楽しかった思い出をひとつ話す」というもの。どのテーブルも、木登りをしたこと、川で魚を釣ったこと、友だちと遊んだことなど、たくさんの思い出が語られていました。
ひととおり話し終わると、今度は思い出の中に大人が出てこなかった人に挙手をしてもらいます。すると、15人中、11人が手を挙げました。これは興味深い傾向です。さらに、質問はこう続きます。“その楽しかった体験を、今の美しが丘の子どもたちは体験できていますか?”。
手が挙がったのは、なんとたったひとりでした。自分たちが今でも覚えている楽しい体験を、今の(美しが丘の)子どもたちは体験できていない…。これに気づかされた参加者はみな、ショックを隠しきれないようすでした。

“遊びの剥脱”がもたらすもの

そこから話は“遊びの剥脱”について進んでいきました。2003年に書かれたプレイ・ウェールズの論文によれば、個の成長と種の生存のために、遊びは不可欠であるとされています。遊びの経験が欠けると子どもは、肥満や体力不足など、身体的な影響ばかりでなく、攻撃的になり、うつやひきこもり、校内暴力などが引き起こされやすくなるという研究結果があります。遊びが剥脱されると脳が育たないということは、脳科学の研究結果として示されている事実です。

武田先生がお子さんを通わせた保育園は、1万2000平米という広大な敷地をもつ保育園でした。その自由な保育方針と環境から、障がいのある子どもたちや病気の子どもたちも数多く通っていたと言います。ところが、広々とした敷地で伸び伸びと遊んでいるうちに、コミュニケーションの問題を含む様々な問題は自然と解消され、アトピーなどの病気も改善されてしまうのだそうです。「人は環境によって、変わるのです」と武田先生。

しかし日本は、遊びよりも学びが重視される傾向があります。日本で遊びが保障されない理由はさまざまです。学業成績の重圧、遊びの環境が特に都市部で整っていないこと、環境問題、遊びを支持する専門家が少ないこと、遊びに伴う危険への不安など、言われれば、思い当たることばかりです。

また、現在の子育て支援と言われている支援に、子育てする大人をターゲットとした支援が多く、子ども視点に欠けているというお話も印象的でした。大人を中心にものごとを考えると、泥遊びよりも高価な遊具の導入が増え、遊具には「○○してはいけません」という貼り紙が増えます。ます。家庭では、大人が楽をするために、テレビやゲームを与えるケースもあるでしょう。主人公不在の子育て支援では、子どもの自律性が育つ環境をつくることは、難しいのです。

20年後にどんなまちにするか?

これらを踏まえて、最後に「20年後にどんなまちにするか」を話し合うワークを行いました。

「私は過去に戻ればいいとは思いません。20年前を考えて、これからの20年を考えてください。何が残り、何がなくなるのか? 美しが丘の緑は減っているのか、増えているのか? 20年後にどんなまちにするか? 子どもたちの意見は聞きますか? いつ参加してもらいますか? どうしたいと思っているかによって答えは変わってきます。どこかの真似ではなく、この地域でどんな子育てをしたいかによって、まったく新しいモデルをつくる必要があります」と武田先生。

話し始めると、次から次へと意見が出てきて、とても盛り上がりました。武田先生も、各グループを回って、ときおり問いかけをしています。時間がきても話は止まらず、各自の考えや思いがたくさんあるのだと感じました。

1グループ
それぞれの職業の役割と、できることについて話した。 学校がまちと繋がるのは大切なこと。子どもたちの学んでいる生き生きとした姿を、保護者やまちと共有したい。
ケアプラザは室内だが、場を提供することができる。繋がる機会やきっかけづくりをしていきたい。

2グループ
団地の公園は安心して出かけられる場所。ぜひ残したい。
同世代のお母さんとお話することはあっても、上の世代と話す機会がない。もっと多世代の交流を。

3グループ
異世代の交流の場をつくりたい。
動物と触れ合えるような場がほしい。
心から話し合える場があればいい。

4グループ
「地域のこどもたちに何ができるか、今の自分たちに何ができるかを話し合った。
土体験ができる場所がほしい。
余っている土地を使って畑をやる。
多世代が集まることができる広場がほしい。

行動しなければ、20年後もまちは変わらない

武田先生は、これを受けて、実際にどう動いていくのかを参加者に問いました。

「実際に動ける人はいますか? どれだけ話が盛り上がっても、動かなければ20年後もまちは変わりません。このまちはモデル地区になっていて、横浜市や東急も応援してくれています。それは充分活かせばいいと思います。でも最後はここにいる人たちがどうやって動くか、なんです」

学ぶこと、話をすることは大切なことです。しかしそれだけで終わってしまっては、ただの自己満足と空想で終わってしまいます。2014年度はタウンミーティングを通して、保育・子育て関係者の交流や学びの機会を創出していますが、ひとりひとりが、このきっかけをどう行動に反映させていくかが、今後のまちづくりのカギとなっていくのでしょう。

その場にいたひとりひとりが“どう行動するか?”という大きな宿題をもらい、まちの未来と子どもたちの未来を考えながら帰路についた、印象深い夜でした。
 

参加者の感想

J.Hさん(40代/女性)
外遊びの大切さのことや、遊び=学びというお話に感激してしまいました。保育士をしているのですが、お母さんたちは、どうやって子どもたちを遊ばせたらいいのか悩んでいるし、なんとか遊ばせなきゃってすごく頑張っています。でも、親が何かしなければいけないのではなく、子どもは自ら遊びを見つけ出していくし、それが自然と学びに繋がっていくのですよね。今日の話を、さっそくお母さんたちに伝えたいなと思います。

Y.Kさん(40代/女性)
今日の先生のお話を伺って、自分の目指していること、子どもが土に触れるような教育の仕方は間違っていないと思いました。物件や設備のこと、団地はNPOには貸さないなど、さまざまな規制がある中で、出来ないと逃げるのではなく、できるところから突破していくエネルギーをもらいました。でもやっぱり、いつも思うことですが、横に繋がることが難しいし今後の課題だと思います。

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