イベントレポート

2015.02.02(月)

美しが丘中学校の生徒による「職業インタビュー」を実施しました

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大粒の雨が降る生憎の天気となった1月15日、モデル地区内にある美しが丘中学校にて、同校1年生を対象とした「職業インタビュー」が実施されました。

中学校と次世代郊外まちづくりが連携して行なう学習プログラム

昨年度、「次世代郊外まちづくり」は、同校3年生を対象とした「次世代郊外まちづくり シビックプライド~美中プラン~」を学校と連携して実施しました。これは、シビックプライド(まちへの誇り)の醸成に向けた生涯教育、そしてまちの新しい担い手づくりを趣旨として「自分たちが地域にできることは何か」を社会科授業の一環として学習してもらったものです。2014年3月には学習の集大成として、たまプラーザ テラス・プラーザホールにて、地域や保護者の方々に、生徒たちが考えたまちづくりプランを発表してもらいました。

今年度も引き続き、まちの未来の担い手づくりを目指し、学校と連携した学習プログラムに取り組んでいます。これまで、ICTリテラシー向上を目的とした全生徒分のタブレット配布など、さらなる教育の質の向上に向けて、さまざまな活動を進めています。

今回の職業インタビューは、働くことの尊さや意義、生き方についての考えを深め、時代と、子どもの発達段階に見合った職業観を育むことが主な目的です。

「子どもたちは将来のことを、高校進学など、短期的にしか考えられない傾向があります。本当はその先を考えながら、どの高校に行くのか、大学に行くのか、そのために今、自分は何をすればいいのかを考えることが大切です。そこで、少しでも子どもたちの意識を変えられないかと思い、次世代郊外まちづくりと連携を取りながら、このプランを考えました。まずは、なかなか知ることのできない職業の方にお話を聞くことで、自分の生き方や将来を考えてもらい、最終的には、自分がしっかり目標をもつことや、じつは足元(地域)を見ることが大切だということに気づいてもらえたらと思っています」と話すのは、今回の授業を担当する先生。

広い視野を育てるために、先進的な職業の方へインタビュー

生徒たちが仕事に就く頃には、ICTのさらなる普及や技術の向上、社会課題の変化によって、これまでになかった新しい仕事や働き方がますます増えているだろうと考えられます。そこで今回は、ICTやまちづくりなど、比較的新しい分野で活躍する、先進的な職業の方々を中心に、9名の講師をお招きしました。

講師一覧(括弧内は子どもたちが調べた具体的な仕事内容)

1.アーキタイプ株式会社・代表取締役 高橋靖典さん
(ビジネスコンサルティング・コンテンツクリエイティブ・デジタルプロモーション・コミュニケーションプロデュースなど)

2.株式会社石塚計画デザイン事務所・代表取締役 石塚雅明さん
(都市デザインやまちづくりの支援、まちづくり活性化アドバイス、ファシリテーター養成研修など)

3.株式会社グラディエ・代表取締役 磯村歩さん
(パーソナルモビリティにおけるデザイン、コンサルティング、調査研究。シェアハウス・シェアオフィスなどの建築設計やコーディネーションなど)

4.東京ガス株式会社・リビング営業部街づくり開発営業グループ・課長補佐 後藤幹雄さん
(ガスの製造・供給・販売、ガス工事、エネルギーサービス、ガス機器の製作・販売など)

5.東京大学大学院・工学系研究科都市工学専攻・教授 小泉秀樹さん
(まちづくり論を教えている教授)

6.株式会社ビットメディア・代表取締役 高野雅晴さん
(インターネットを利用した情報提供、通信販売業務、ホームページの企画制作、コンサルティング業務、各種マーケティング、プロモーション業務など)

7.株式会社ユーズ・代表取締役 染谷ゆみさん
(環境教育事業、カフェの営業、廃食油の循環・バイオ燃料の販売、VDPプラントの販売、地域コミュニティ油田モール運営など)

8.横浜コミュニティ放送株式会社・ディレクター 船越浩市さん
(たまプラーザテラスにあるサテライトスタジオでラジオの生放送をやっている)

9.東京急行電鉄株式会社・都市開発事業本部 都市戦略事業部 企画開発部 次世代郊外まちづくり担当 岡本正義さん
(次世代郊外まちづくりの企画運営)

大人でも、一見しただけではよくわからない仕事内容の方が多いと思いませんか? これを生徒たちがどう理解し、受け止めるのか、とても気になるところです。

仕事内容を理解し、好奇心をもって接する

生徒たちは、各班10名程度に分かれ、それぞれ別の教室で、担当する講師の方のお話をじっくり伺います。最初に仕事内容について説明していただき、その後、事前の授業で考えた質問を中心に、各班の代表者がインタビューを行ないました。

授業が始まる頃は、どの生徒も緊張気味でした。事前に用意した質問は「いったいどんなことをする仕事ですか?」「仕事をしていて大変なことはなんですか?」「子どもの頃はどんな仕事をしたいと思っていましたか?」など、等身大の素朴な疑問が中心です。

緊張がほぐれたと感じたのは、インタビューも後半に入った頃です。話を聞いて仕事内容が理解できてくると、緊張以上に好奇心が増してきたようです。徐々に生徒たちの肩の力が抜けていき、講師の方々のリードもあって、追加の質問をしたり、話を聞いた感想を言う子どもたちも出始めました。

講師の方々から見た生徒たちの様子

一方、生徒たちだけではなく、講師の方々もいろいろな刺激を受けたようです。横浜コミュニティ放送株式会社でFMサルースの番組ディレクターを務める船越さんは「ディレクターはわかりづらい職業だと思うので、子どもたちにちゃんと理解してもらえるかが心配でした。ラジオ本来の“口で説明する”という原点を逆に勉強させてもらいました」と、話してくださいました。

株式会社ビットメディアの高野さんは、「家庭の省エネプロジェクト」のサイト運用などに携わっていますが「省エネプロジェクトを盛り上げていくためには、今後どうしたらいいとお考えですか?」と、大人顔負けの質問をされて驚いたそうです。

たまプラ油田開発プロジェクトを住民とともに企画運営している株式会社ユーズの染谷さんは、「お父さんがこういうことが好きだから一緒に参加したい、協力したい」という生徒の感想を聞き、今後プロジェクトを進めていくうえで心強く感じました。また「名言はありますか?」と尋ねられた東京大学大学院の小泉さんや自社のマスコットキャラクターについての質問が出て微笑ましさを感じたという東京ガス株式会社の後藤さんなど、子どもらしさが印象に残ったという方もいました。

生き方や働き方に話が及んだ班もありました。株式会社グラディエの磯村さんは、大きな企業にいた頃と、自分で興した今の会社での働き方の違いをお話したそうです。アーキタイプ株式会社の高橋さんは、仕事についてのイメージを尋ねられました。すると、仕事はつらいものと考えている生徒がほとんどだったそうです。そこで、楽しいこともたくさんあるという話をして、「大人になるとやれることとやりたいことが混ざってわからなくなってしまうから、やりたいことを明確にして、今のうちからメモをとっておくといいですよ」とアドバイスしました。

子どもたちの理解力に驚いたという方もいました。東京急行電鉄株式会社の岡本さんが家庭の省エネプロジェクトの成果について「3回累計で約122トンのCO2削減を達成しました。これは杉の木に換算すると約8,700本になります」と説明したところ、「私たちが意識を変えるだけで、杉の木を8,700本植えたのと同じ効果があるんですね。次世代郊外まちづくりがやっている他のプロジェクトも、それと同じことなんですね」と核心をついたことを言われたそうです。まちづくりや都市計画を手がける石塚計画デザイン事務所の石塚さんは、最後に感想を聞いたところ「自分のためにどういう仕事に就くかということだけを考えていたけれど、地域のために何かをする仕事もあるんだということがわかりました」など、まちづくりという仕事の本質を理解してくれたことが嬉しかったそうです。

今後の成長が楽しみに

おもいのほか、どの生徒も集中してお話を聞いていた印象でした。

「それはたぶん(仕事内容が)謎だったからだと思います。生徒たちはわからないことや知らないことに対しては好奇心が沸いて、しっかり集中できるんです。短い時間だったので、仕事の中身を詳しく知るところまではいかなかったかもしれません。でも、講師の方が何をやってるのかなという疑問をもったり、不思議に思ったことを追究するということだけでも、今回の授業はきっかけとして良かったんじゃないかと思います」と担当の先生。

後日の授業で、生徒たちは職業インタビューの感想を書き、タブレットを活用して各班ごとにまとめたインタビュー内容をクラス内で発表しました。しっかりと仕事を理解し、講師の方々の想いや意図を汲み取っていることがうかがえました 。

今後、生徒たちの心はどんなふうに成長していくのでしょうか。その第1歩は、力強く純粋で、今後の展開と子どもたちの変化が楽しみになる内容でした。

生徒たちが書いた感想文

後日、生徒たちは今回の職業インタビューの感想文を書き、各講師に送りました。その内容はどれも素晴らしかったため、一部を抜粋してご紹介します。


1.アーキタイプ㈱・高橋さんへの職業インタビューの感想
本当にありがとうございました。私は今回お話を聞いて仕事というものは楽しいもの、ということを学ぶことができました。そして、どんな仕事でも、楽しくするかしないかは自分次第、ということも学びました。中学生なので「働く」ということはまだまだ先だけど、いつか仕事に就いた時は、きっと楽しいのではないかと思います。たとえつらかったりする時があっても気もち次第で変わることができると思うので、何事にも前向きに楽しく取り組み、乗り越えていきたいと思います。
そして私が今回のインタビューを通していちばん心に残ったのは「仕事とは自分の得意なことと相手の得意なことの交換」という言葉です。私が将来目指しているものも交換なのかと考えた時に「見えにくくても、どこかで交換し協力しているんだ」と思いました。どの仕事も得意なことの交換で成り立っていると思いました。そして今自分がやりたいこと、なりたいもの、好きなもの、それはすべて忘れず心の中で強く思うということが大事なのを改めて学びました。今、自分の中にあるものを忘れず進んでいきたいと思います。貴重なお話を聞けて楽しかったです。本当にありがとうございました。


2.㈱石塚計画デザイン事務所・石塚さんへの職業インタビューの感想
「地域の方のお手伝い」という言葉がたくさん出てきました。自分だけでまちのデザイン、まちづくりをするわけではないということも強調されていました。私のイメージでは、まちづくりというものはデザインする方がいて、それをつくる人がいて、地域の方が住むものなのだと思っていました。でも実際は、地域の方がいてこそのまちづくりでした。今、私が住んでいるこのたまプラーザも、そのように豊かなまちになっているのですね。
石塚さんは30歳の時、会社を立ち上げたとおっしゃっていました。それは、とてもすごいことだと感じました。なぜなら、地域の方のためで、自分のためではない仕事だったからです。自分の住んだことのない、遠い県まで行ったり、永遠に続くまちづくりをしていったり、なかなか普通の人にはできない仕事です。だから、石塚さんにしかできないこともあるのかもしれません。「笑顔とうなずき」が大切なのも学びました。初対面の方には笑顔でうなずきですね!


3.㈱グラディエ・磯村さんへの職業インタビューの感想
先日は私たちのために美中にきてくださりありがとうございました。私は磯村さんのお話を聞いて、将来の夢について考えました。自分のことだけでなく、周りの人のことも考える仕事をすると聞いて、すごく深く人との関わりを大事にしていると思いました。私は自分の好きなことをやりたいとずっと思っていたのですが、人を思い、みんなが繋がるような仕事に就きたいと改めて感じました。
私は美術が苦手で、あまり好きではなかったのですが、絵を描くことがものづくりの原点で、それによって人々が笑顔になると考えると苦手でも好きになりたいと思いました。
今回はいろいろなことを教えてくださり、本当にありがとうございました。自分の未来に生かしていきたいです。


4.東京ガス㈱・後藤さんへの職業インタビューの感想
先日はお忙しい中お越しいただきありがとうございました。私はお話を聞いて天然ガスが一番環境にいいけれど、あまり使われていないということがわかって驚きました。石油や石炭をあまり使わず、天然ガスを使うようになると環境に優しい町になると思いました。でもすぐに石油や石炭から天然ガスに変えるのは難しいので「ウルトラ省エネブック」に書いてあった省エネになることを家で実践してみようと思いました。
また後藤さんのおっしゃっていた「東京ガスの行動基準には社会人としてあたりまえのことが書いてある」というのをきいて、あたりまえのことをするのは大変だと感じました。
これからはガスのことや社会人に必要なことをふまえて生活していきたいと思います。ありがとうございました。


5.東京大学・小泉さんへの職業インタビューの感想
わかりやすい「職業」についての講義、ありがとうございました。「働く理由は?」と聞かれた時に、私は「お給料のために」と答えていました。今回、小泉先生はこのようにおっしゃっていました。「まちに住む人々が、どのようなまちに住みたいかを考えて仕事をする」。私はこの言葉を「人のために」と解釈しました。
「働くということは自分のためではなく、ほかの人のためにもなる→ほかの人のために自分ができる最大限のことをする」というふうに考え直しました。
今、誰かに「働く理由は?」と聞かれたならば、私は「人のために」と答えます。働くことの前提として、人のためになることを考えるという作業は欠かせないことだと思います。これから自分がどのような就職先に決まるかわかりませんが、自分のことだけでなく周囲のことにも気を配れる人になりたいと思いました。今回の講義、ためになりました。ありがとうございました。


6.㈱ビットメディア・高野さんへの職業インタビューの感想
職業インタビューにとりくみ、仕事についてよく知ることができました。「省エネプログラム」や「交通系ICカードをポイント媒体として利用するシステム」、「ローカル局のニュースの即時ネット配信」など色々な仕事をしていて、どうやったらよりよくなるかを考えながら仕事を進めていることがわかりました。株式会社ビットメディアさんがやっている仕事はすべて「誰かのために」、「人の役に立ちたい」などの気もちがあったからできた企画だと思いました。苦労して目標を成し遂げ「ありがとう」や「いい企画だと思う」などの声をいただいたときにやりがいを感じるのは、がんばったからだと思います。がんばった人こそ仕事にやりがいや喜びを感じることができるんだと思いました。来年の職業体験や将来にむけ、仕事に対する姿勢や、なんのためにやっているのかを考えて「働く」ことが大切だとわかりました。


7.㈱ユーズ・染谷さんへの職業インタビューの感想
先日はインタビューを受けていただき、ありがとうございました。私は、高校を卒業してアジアに旅に出たり、まだ誰もやったことのない天ぷら油を燃料に変えることに成功するなど、染谷さんの行動力にとても驚きました。また、とても印象に残っているのは「壮大なことを考えながら、今、自分のまわりで、できることをやる」という言葉です。実際に染谷さんは、天ぷら油を再利用したり、東日本大震災の被災地に行って支援をしていて、自分のできることをやるというのはとても大切なのだと思いました。私も染谷さんのように積極的に行動し、人の役に立てるようになりたいです。あと、これからは天ぷら油を捨てないようにします。忙しい中お時間をいただき、本当にありがとうございました。


8.横浜コミュニティ放送㈱・船越さんへの職業インタビューの感想
今回は忙しい中、ぼくたちに「働くこと」について教えにきてくださってありがとうございました。僕は今回の授業をうけるまで、ラジオがどのように進行するか、ディレクターとはどんな仕事なのかということについてほとんど知識をもっていませんでしたが、船越さんが事前資料やCUEシートを用意してくださったおかげで進行の仕方、ディレクターの役割についてくわしく知ることができました。今回、ぼくがもっとも印象に残ったことは、船越さんが休日の日もラジオで使う音楽などを探していると聞いたとき、ぼくは休みの日でもラジオのことを考えているんだ!とびっくりしました。僕が働くときに船越さんが休みの日にも仕事のことを考えていたように、自分の仕事を精一杯働きたいと思いました。


9.東京急行電鉄㈱・岡本さんへの職業インタビューの感想
先日は自分にとって将来のことを考える良いきっかけとなりました。岡本さんが教えてくれたことはたくさんありますが、シビックプライドについて美中生と一緒に考えたというのが心に残りました。僕たちの3つ上の先輩が、マナーが良くて賢くてとても良かったと聞いて僕たちも先輩を見習っていきたいと思いました。
生きがい、やりがいを見つけると仕事がますます楽しくなってくるそうなので、大人になったらまず、やりがいを見つけることから始めたいと思います。働くことで夢を実現する。僕もこのように生きていきたいと思います。ありがとうございました。


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