イベントレポート

2015.03.13(金)

第6回 次世代郊外まちづくり ラーニングカフェを開催しました

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暦の上では春とはいえ、まだまだ寒さが身にしみる2月19日、三丁目カフェにて「第6回 次世代郊外まちづくり ラーニングカフェ」が開催されました。2月5日に開催予定だった第5回が雪の影響で延期になったため、ラーニングカフェは久しぶりの開催です。

講師はたまプラーザ駅をよく利用しているという「防災ガール」代表の田中美咲さん。テーマは「防災ガールが防災を当たり前の世の中に!〜やりたくなる防災の仕掛け〜」です。会場には、地域で積極的に防災の取り組みをされている方々が多く集まり、「防災たまプラーザ・ST」と大きく書かれたウインドブレーカーを羽織っている方もいらっしゃいました。

もっと防災をおしゃれでわかりやすく!

東日本大震災を契機に、それまで勤めていた大手IT企業、サイバーエージェントを退社して福島に移住、1年半、復興支援に従事した田中さんは、被災された方から「支援してくれるのは嬉しいが、まずは自分のことをやりなさい」と言われたことで、これからの防災の在り方について考えるようになりました。

「100%の知識がある人が3人いるより、3%の知識がある人が100人いたほうが、災害時に関しては助け合いが成立します。防災は、少しでも知識のある人がたくさんいることが重要だと思っています」

災害に見舞われると4人中3人は何もできない状態になるそうです。また、日本は30年以内に70%以上の確率で2人にひとりが被災すると予測されています。ところが若者の4人にひとりしか防災対策をしていないという現状を知った田中さんは“もっと防災をおしゃれでわかりやすく”をコンセプトに「防災ガール」を立ち上げました。

たとえば情報発信の面では、どこに何が書いてあるのかわからないものではなく、毎日チェックしたくなるようなおしゃれで見やすいウェブサイトをつくりました。機能性重視だった防犯グッズは、思わず欲しくなってしまうおしゃれなデザインのものをつくり、ロハスデザイン大賞に最終ノミネートされたほど。

被害想定を記した公的文書は誰でも閲覧可能ですが、テキストの状態で160ページもあり、よほど関心がない限り、読む気が起きません。そこでインフォグラフィックという手法で、文字がなくてもわかる資料をまとめました。また、非常食ケータリングや避難所体験カフェ、街コンならぬ防災コンなど、気軽に参加できるイベントを企画し、防災に対する窓口を広げていきました。
若干26歳の田中さんが発信する防災への取り組みは、同世代の傾向や興味関心をしっかりと捉えた、画期的な内容です。現在では、日本全国、および海外に趣旨に賛同する70人以上の防災ガールがいて、有志で防災活動に取り組んでいます。

いろいろな形がある防災

「みなさんに質問です! おうちで防災対策をしている人、もしくは今している途中の人はいらっしゃいますか?」

普段の講演ではあまり手が挙がらないそうですが、この日は防災に携わる人が多く来場していたこともあって、あちこちで手が挙がりました。

防災の取り組みにはさまざまなものがあります。たとえば備蓄ひとつをとっても、普段から持ち歩き、揺れた瞬間に生命を確保できるものを示す0次、すぐに持ち出して逃げ、災害が落ち着くまでに必要なものを示す1次、避難所で待機し、復旧するまでの3〜7日分の衣食住を賄う2次のものがあります。

「どこにいて、どんな特徴の災害で、どこに逃げて、どうすればいいのか。これを全部調べて頭に入れるのは大変です。ですから、まずイメージしてできることからやっていきましょう」と田中さん。

次世代版避難訓練「TOLAF(トラフ)」を体験

防災ガールが提案し、現在、東京、京都、熊本、長野などで毎月開催されている次世代版避難訓練「TOLAF(トラフ)」は、誰にも指示されずに自分でイメージし、決断して行動するための避難訓練です。

通常は野外でやりますが、この日は簡易版として室内で簡単なワークを行なうことになりました。

掲示されたのは、ある一室の大きなプリントです。まず、参加者のみなさんに、プリントをみて、この部屋のどこが危険かを、付箋に書いて貼ってもらいました。スタンドライト、大型テレビ、ガラスのテーブル、窓、階段下、エアコンの下、コンセントなど、部屋中にたくさんの付箋が貼られました。

次に、貼られた付箋をひとつひとつ見ていき、どう危険なのかをシェアしました。ひとくちに階段下といっても「階段の上から何か落ちてくるから危ない」という人もいれば「階段から落ちる可能性があるから危ない」という人もいて、危険の見方はさまざまです。

こうして自分のいる場所の危険を認識できると、今ある家具や家電をどうしたらいいのかという話ができるようになります。その後、テーブルごとに「おうちの防災」をどうしていくべきか、どうしたいかを話し合いました。

「震災後に耐震補強をし、3人が2ヶ月間生活できる備蓄を用意した」「ガスの元栓を閉めて出かけるようになった」「簡易トイレ付きの防災グッズを購入した」など、すでに実践している防災対策や今日のワークを通して気づいた今後するべき防災対策について、さまざまな意見や感想が出されました。なかには「マンションで防災について取り組んでいる。これまでは消防車を呼んで終わりだったけど、今は班に分かれてどういうものが必要か、何をやればいいのかを話し合い、予算を取るようになった。防災意識が高まり、話し合う大切さを痛感している。今後は0次、1次の備蓄についても考えていきたい」といった、思わず田中さんも感心する興味深い地域の防災のお話もありました。

途中、田中さんに質問をする人もいました。「地域の防災活動に参加する人は高齢者が多く、若いお母さんなどは参加しません。若い方が参加したいと思う訓練にするにはどうしたらいいですか?」という質問には「まず、防災をやっている人がかっこいいというイメージがつけばいいと思います。防災ガールを始めたのも、若い子が憧れる存在がいればいいのではないかと思ったことがきっかけでした。それと、勝手に内容が決められている防災訓練では必要とされていない感じがしてしまうので、参加型の防災訓練がいいと思います」と田中さん。

東日本大震災発生時の体験を共有する

最後に、東急電鉄の東浦さんの提案で、東日本大震災が起きたとき、どこにいてどのように行動したのかを発表してもらいました。仕事をしていて帰宅困難者になり、何時間も歩いて帰った人、帰るのを諦めて職場で待機した人、自宅にいて危うく火事になるところを防いだ人など、ひとりひとりまったく違う体験をしていて、話を聞くだけでも災害時の行動を多角的にイメージする力が身に付いていくようでした。

災害の多い日本で、本来は誰もが持っていなければならない防災に対する関心をどう広げていくのかは大きな課題です。田中さんのように、若い世代から積極的に防災に取り組む人が出てくることは、大きな希望だと感じました。また、まちを知り、コミュニティの助け合いの中で災害を乗り切ることも、防災にとっては大切なことです。防災とまちづくりの関係性についても、改めて考えさせられた講義でした。

本文関連サイト
■防災ガール

参加者の感想

H.Tさん(60代/男性)
自治会で防災の活動をしていますが、田中さんのような若い世代の方になかなか参加してもらえないことが課題でした。それで、どうすればいいのかなと思っていたのが、今日きたいちばんの理由です。すごく勉強になりましたね。普段、我々が考えている防災の取り組みと違う視点で働きかけなければいけないというヒントをいただけました。特に3%でもいいから100人の人に分かりやすく伝えるっていうのがすごくいいな、なるほどなと印象に残りました。

Y.Uさん(60代/男性)
今までは2次からの発想しかありませんでしたが、0次とか1次っていう考え方はすごく大切なんじゃないかなと思いました。それと、みんなが共有できるようなことが増えていく、100%じゃなくてもいいから意識のある人が増えていくということが重要だと思いました。

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