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イベントレポート

2013.04.09(火)

次世代郊外まちづくり「たまプラ大学」その6「つながりを創りながら暮らす 〜仕組みをもった住まい方コレクティブハウジング〜」

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まだ寒さの厳しい2月22日、たまぷら大学その6「つながりを創りながら暮らす〜仕組みをもった住まい方コレクティブハウジング〜」が開催されました。お話を伺ったのは、NPO法人コレクティブハウジング社共同代表理事の宮前眞理子さんです。

「コレクティブハウジング」とは、既成の家族概念や住宅概念に囚われず、個々の自由やプライバシーを尊重しながらも、生活の一部を共同化するライフスタイルのことです。約80年前にスウェーデンで始まり、住居としては、独立した居住スペースのほか、コモンスペース(共同の食堂・リビングなど)や共用設備(キッチンや、ランドリーなど)が設けられているのが特徴です。

18年前にコレクティブハウジングを知った宮前さんは、これからの少子化・高齢化に向けて、その必要性を感じ、活動を始めました。

日本のコレクティブハウスでは住まい手が家賃負担する部分の比率として、住戸スペースが80〜87%、コモンスペースが13〜20%程度となっています。負担家賃を増やさないためには、個々のスペースをコンパクトにして、コモンスペースを生み出す工夫が必要です。ランドリーや、接客スペースを共用にしたり、大きな共用倉庫を作り、各戸の収納スペースを減らすなど様々な工夫がなされています。

また、多世代で住まうことを大切にしているため、住戸はシェアタイプ、ワンルームタイプからファミリータイプまで様々な広さを用意します。家賃は収入状況に見合った部屋を選べるよう4万円台から15万円程度。実際の入居者は、赤ちゃんから80代までバラエティ豊かですが、半数近くが多様な世代の単身者で、男女比は変動しますが女性が多い傾向にあります。

コレクティブハウスとシェアハウスの違い

近年、日本でもシェアハウスという住まいの選択が注目されています。経済的負担の軽減がはかれることから、若い世代を中心に人気を呼んでいますが、シェアハウスとコレクティブハウスにはいくつかの大きな相違点があります。

ひとつはキッチンやリビングが共有となっているシェアハウスと違い、コレクティブハウスは各戸にキッチンや浴室、トイレなどが設置され、居住空間が独立している点です。そのため、共同生活でありながら、プライバシーはしっかり確保されます。共同生活には、話し相手が常にいることや困った時に助け合えるといった利点がありますが、ひとりになりたい時にひとりになれず、ストレスを感じてしまうこともあります。「恊働、共食、共遊を楽しむためには、居心地の良い私の家があるということが大事になります」と宮前さん。

もうひとつは居住者が主体的にコミュニティを創り、育むという点です。月に1度、定例ミーティングを開いて居住者間で問題解決をはかるほか、コモンミールグループ、ガーデニンググループ、エコロジー&リサイクルグループ、掃除・メンテナンスグループなど、目的に応じた活動グループを作り、入居者は関心のあるいくつかのグループに必ず所属します。ただ家を借りて住むのではなく、居心地の良い暮らしを自分たちで創り出し、運営していくのが、通常の賃貸住宅やシェアハウスと異なる部分です。

「コレクティブハウジングでは、家全体を居住者が運営することでさまざまな人と繋がりを持ち、暮らしの質や豊かさを居住者みんなでコントロールするのです」と宮前さん。

たとえばスウェーデンのコレクティブハウスでは、コモンミールといってウィークディの夕食は共同化されています。これは食事当番を決めて、食事を当番の人が作り、希望する居住者が食べるというもの。日本のハードな労働環境では難しいとする意見もあったそうですが、実際にやってみたところ「人が作った料理はおいしい」「誰かと一緒に食べるのは楽しい」と、多くの人から好評だったそうです。現在ある日本のコレクティブハウスでは、各自が月1回の食事当番を受け持ち おおよそ 月の半分は夕食の共同化が出来ており、負担はそれほど大きくならずにすみます。

コモンスペースが地域交流の拠点に

 本での1つの実例として、高層マンションの2階にあった児童館が少子化の影響で移転になり、その空きスペースを改修して作られた「スガモフラット」(東京都豊島区)があります。計戸のうち4戸はシェア住戸で、賃料が低くおさえられ入居しやすい配慮もされています。

「スガモフラット」の居住者が特に試みていることとして興味深いのは、コモンスペースを使ってイベントを開催し、居住者のみならず地域の人々にとっての交流の場としてもハウスを機能させていることです。

たとえば「子育て中にリフレッシュ@すがもの実家」というイベントでは、近隣に住むママや子育て経験豊かな人、心理学などの専門家などに参加してもらい、子育ての悩みを相談したり、ママ友づくりのきっかけを作っています。これは居住者組合が自主的に始めたものですが、今では10組以上の常連がいるほどの人気イベントです。このように、コモンスペースをもっていることでさまざまな活動を行なうことができ、暮らしの豊かさを自らの手で作ることができるようになります。

日本でも、コレクティブハウジングは徐々に認知され、数も少しずつ増え始めています。日本初の公営コレクティブハウス(震災復興のものを除く)も、2013年6月に群馬県前橋市にオープン予定です。コミュニティの希薄が指摘されている日本で、新しい暮らし方として定着していくのではないかと期待されています。

空き家を活用してコレクティブタウンを作る

宮前さんは今後、この考えを拡大していき「コレクティブタウン」を作れないかと考えています。

これは街にある空き家を地域のコモンスペースとし、気軽に集まってお茶をしたり、イベントを開催するスペースとして地域住民が自ら運営し活用しようというものです。地域の中で自分の家に今まで通り暮らしつつ、コモンスペースができることで、まち全体でコレクティブハウジングのようなコミュニティを形成することができます。これは全国のあらゆる地域で応用可能な取り組みです。しかし、ここでも重要になってくるのは住民のお互いのがちょっとしたつながりを大事にしようという主体性です。

「私たちは支援する立場の人間ですが、いくら支援者がいても、住民が動く気がなければまちづくりは始まりません。暮らしを作るという気持ちを持ち、多様な住まい方を考えていってください」と宮前さん。

最後の質疑応答では「入居の審査はあるのか?」「入居者の満足度は?」「日本では賃貸のコレクティブハウスがほとんどだがなぜなのか?」といったたくさんの質問が出ました。不動産関係者の参加も多く、これからの住まいのあり方、暮らしのあり方に多くの人が関心を抱いていることがわかりました。

コレクティブハウジング社では、居住希望会員になった人に情報提供をしたり、入居の初期支援を行なっています。また、既存のコレクティブハウスの見学会などもあります。話だけではイメージしづらい部分があるため、興味をもった人はぜひ1度見学にきてほしいとのことでした。

高齢化や少子化が進み、ひとり世帯が増えている今、これからの住まいは、暮らしやコミュニティのあり方と共に考えることが大切なのだと、改めて実感した講義でした。


 

参加者の感想

Kさん(40代/女性)
シェアハウスとは違う衝撃を受けました。ただ、私自身は今は賃貸で暮らしていて、自治会の活動に参加してくださいと言われるだけでちょっと面倒だなと思ってしまいます。若い世代はコミュニティをちゃんと作りたいという人と、ひとりがいいという人に分断されています。管理運営に自ら参加して暮らせる層がどのぐらいいるのかなというところが気になりましたね。これがどのぐらい広がっていくのかはわかりませんが、広がっていったら、こういうことが当たり前になってよりよい社会になるのかなと、一市民としても期待しています。

Y.Mさん(50代・女性)
今のところ特に生活に不自由はないですが、老後のことを考えると不安があるのは確かです。共同生活と言われるとできないなと思うんですが、コレクティブハウジングなら、やってみてもいいかなという気がしました。若い人たちと暮らすのは楽しそうですね。

T.Oさん(60代・男性)
海外との文化の違いを感じました。日本では土着の文化があって、まだまだ所有権が主張されています。取り組みとしては面白いのかもしれませんが、他人同士で食事をしたり共同生活を送るというのは現状では難しいのではないかと思いました。

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