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イベントレポート

2013.05.10(金)

″超小型モビリティのある暮らし“を考え、次世代郊外まちづくりに生かす「タウンミーティング」

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「スマートコミュニティ推進部会」のメンバーである横浜市、東急電鉄、日産自動車が一体となって国土交通省の事業に協力し、今年2月から3月にかけて2週間、東急田園都市線沿線エリアで生活する子育て層を対象に、超小型モビリティの走行モニター調査を実施しました。このモニター調査の結果を「次世代郊外まちづくり」に生かすための「タウンミーティング」が2013年3月13日に開催されました。

会場には、「次世代郊外まちづくり」のモデル地区在住・在勤の来場者に加えて、多くの関係者やメディアが集まり、熱気あふれる中、横浜市 秋元康幸さんと、国土交通省 星明彦さんの挨拶を皮切りにタウンミーティングが始まりました。

「超高齢化の次代を迎えて、郊外のまちは、交通の問題が出てくるようになりました。例えば、たまプラーザであれば、山、坂、階段が多く、高齢者が移動するには負担が大きい。今回の実験は、横浜市の郊外部には、どういった地域交通が適しているのかを考える新しい材料になると考えています」(横浜市 秋元康幸さん)

「超小型モビリティは、未来社会を担う、新しい乗り物です。今回、子育て世代の方に実際に使っていただくことでライフスタイルや日常生活にどういう変化をもたらすのか、この報告が全国に発信されることで、地域の特性を生かした、よりよいまちづくりに貢献できると確信しています」(国土交通省 星明彦さん)

モニターのみなさんの“超小型モビリティ″利用体験談

続いて、モニターとなった6名の方が、日々の生活の中で、超小型モビリティをどのように使い、何かを感じたか、その貴重な体験を語ってくれました。その間、来場者には超小型モビリティについての質問等を付箋で募集。すると2台のホワイトボードいっぱいのご意見が寄せられ、その関心の高さが感じられました。


 


・ご近所の移動にはピッタリの大きさ!
「超小型モビリティの充電に必要な充電器は、わずか2時間ほどで設置でき、思ったより簡単でした。我が家の駐車場は、2台目は軽自動車しか入らない大きさですが、超小型モビリティなら問題なく停めることができて、荷物の出し入れまでスムーズにできる! 窓がないので、冬は寒いですが、近所を移動するには最適の大きさでした。運転していると、自転車に乗った子どもたちに追いかけられるという楽しい出来事がよくあり、あぁ、自分の住んでいるまちは、のどかだなぁと、実感し、癒されました」


・気軽に乗れて外出の機会が増えました!
「以前から電気自動車には興味があり、1年前に家を新築した際には、充電器も設置しました。今は8人乗りの車にのっているので、近所の買い物に大きな車を出すのは億劫でしたが、これなら加速も良く、バイク感覚で気軽に乗れるのがいいですね。面倒だなと思っていた夫の送迎も『いってあげようかな』という気になりましたね(笑) 窓がない分、ガソリン車が近くを通ると、その騒音や排気ガスの臭いを直に体感し、静かで空気を汚さない電気自動車の良さを実感しました」


・ルックスの可愛らしさに「モビちゃん」と命名!
「とにかくルックスが可愛いですよね。その可愛らしさに、思わず『モビちゃん』と命名してしまいました。私は民生委員や地域のボランティアをしているため出かける機会が多く、モビちゃんを連れ回したのですが(笑)、どこに行っても注目され、多くの方から声をかけていただきました。みなさん、モビちゃんを見ると笑顔になるので、私自身も嬉しくなりましたね。ただ、真冬はやっぱり寒い! 乗車は11時~15時が限界かなと感じました」


・気軽に乗れるので外出頻度が増えました!
「子どもの送り迎えや買い物に使いましたが、(6歳未満の)小さな子どもは乗れないのが残念でした。我が家には幼稚園の子どもがいるので、小さな子どもが乗れるようになると、もっと活動範囲が広がるのに、と思いました。また、窓がないので、後部座席に荷物を置くと落ちてしまうことがあり、取り外し可能なカゴをつけるとか、何か工夫が必要だな


・急な坂道も細い道でも難なく乗れちゃう!
「我が家のまわりには坂道が多いのですが、かなり急な坂道でも問題なく発進でき、加速もスムーズ。運転するのが楽しくて、狭い道でも『入っちゃおう』という気分になり、目的もないのに近所をよくドライブしました。窓がないのは寒く、雨のときは不便ですが、風や陽ざし、音や香りなどの自然を直接感じられて、何度となく通った道でも、これまで気付かなかった新しい発見がいっぱいありましたね。ただ、自宅で開催している料理教室の生徒さんを後部座席にのせたのですが、体の硬い人は入りづらそうでした。また、ミニスカートの人はちょっと困っているようでした」


・子どもたちと環境の話をする機会が増えました
「昨年、横浜市の補助を受け、太陽光パネルとHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を設置し、環境には家族で高い関心を持っていました。超小型モビリティを利用することで、空気を汚さない、環境を傷つけていない、環境に役立っているという精神的な満足感を得られることが嬉しかったですね。電気を自分で作って、使うというのは、家庭菜園でプチトマトを作って食べるような感覚。ちょっとした自給自足のような楽しさがありました」と感じましたね。思ったより充電時間は少なく、運転もしやすく、今までだったら車を出すのが億劫に思うような距離でも、気軽に外出できるようなり、外出頻度が増えましたね」


 

人を惹きつけ、まちに親しむ、楽しい乗り物

モニターさんの声をまとめると、超小型モビリティの魅力として、「出かけやすい」「愛着がわく」「人を惹きつける」「地域や周囲とのリレーションに役立つ」「環境に貢献」等のキーワードが浮かび上がりました。一方、会場からは、「窓がないということで、雨の日はどう活用するのか?」「他の乗り物との明確な使い分けはあるの?」といった今後の課題につながりそうな意見も挙がりました。

また、日産自動車 柳下謙一さんからは、作り手としての視点で、東京急行電鉄 東浦亮典さんからは次世代郊外まちづくりの立場として、こんなご意見をいただきました。

「女性はモノに対する評価が厳しいうえに、もっとも寒い時期に体験していただいたので、厳しい意見を言われることを覚悟していましたが、『楽しんで乗れた』という声を多くいただいて、改めて超小型モビリティの可能性を確信しました。窓がない、空調がない、といった不便な点はありますが、超小型モビリティは決して軽自動車をダウンサイジングしたものではない、という認識を持つことは大切で、リスクや不便な点はあるけれど、適した環境で正しく使えば、非常に有効に活用してもらえるツールだと考えております」(日産自動車 柳下さん)

「車に乗ると、普段穏やかな人の性格が変わる、なんて話はよく聞きますよね。閉めきった、外界から閉ざされた世界では、人は、『自分だけの空間』ということで自己を中心に考えがちですが、超小型モビリティは窓がないので、外の世界に開かれた車といえます。『スロー』『環境』『やさしさ』などを重視する次世代のまちづくりにとって、人やまちに関わりながら走れる超小型モビリティは、お互いが譲り合い、やさしい気持ちで移動できる乗り物となるのではないでしょうか。ただ、充電施設等のインフラの整備、路上駐車の問題など課題は多く、ライフスタイルやまちづくりを根本的に見直す必要もあると感じています」(東急電鉄 東浦さん)

電気自動車(EV)の普及に取り組むヨーロッパ

自動車ジャーナリストの川端由美さんは、子育て中のお母さんでもあります。ジャーナリストとして、ひとりの母として、子どもたちの未来を想い、「超小型モビリティが家にやってくることで、子どもたちがエコモビリティを考えるいい機会になると思います。こんなふうに生活の中で身近に環境問題に触れることで、環境ネイティブ世代が育つのではないでしょうか」とコメントを。また、世界で活躍する超小型モビリティの姿を紹介してくれました。

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日本でも近年超小型モビリティの普及が期待されていますが、アメリカでは1960年代に超小型モビリティが開発されていたのだとか。ヨーロッパでも同じく1960年代に、「バブルカー」と呼ばれるカテゴリーがあり、様々なメーカーが超小型モビリティを作っていたそうです。

ヨーロッパはEVの歴史も実用例も多く、現在ではL7eという超小型モビリティのカテゴリーがあり、国によっては運転免許なしで乗れ、駐車スペースを選ばないことからも人気を呼んでいるようです。また、ロンドンでは、市街地に入るのに8ポンドという高額な渋滞税を取られますが、エコカーはその税金が免除されるため、今後も超小型モビリティの人気は高まりそうです。EV先進国のパリでは、「オートリブ」というEVのカーシェアリングがすでに進んでいて、もっとも遅れているというドイツでも、エコカーしか走れない環境ゾーンを設ける動きが各地で進んでいるそうです。

さまざまな可能性を秘めた超小型モビリティ。日本も欧米と同じように、まちや暮らしに沿った形で活用され、次世代のまちづくりやライフスタイルに大きく貢献してくれることを誰もが期待するようなタウンミーティングとなりました。

参加者の感想

Y.Yさん(40代・女性/美しが丘在住)
電気で走るクルマなんて、まだまだ一般的じゃないと思っていましたが、このタウンミーティングを通して、町なかでちょこちょこ見かける日が来るのも遠くないのかな、と思いました。今後は、国がインフラ作りにどう乗り出すのか期待したいですね。

S.Jさん(40代・男性)
超小型モビリティは、これからの社会に、未来に、必ず貢献するものだと実感しましたね。また、私は技術者なのですが、こうして体験者の生の声を聞くことで、あらためて、現場の意見というのはモノ作りにおいて大切だなと痛感しました。

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