イベントレポート

2016.03.02(水)

AOBA+ART プラたま〜遊歩道アイデアウォーク〜が開催されました!

次世代郊外まちづくり、住民創発プロジェクトの参加グループは現在も活動を続けています。

今回はAOBA+ART実行委員会が主催した「プラたま 〜遊歩道アイデアウォーク〜」(2016年1月16日(土)、17日(日)、23日(土)、24日(日)開催)を報告します。

AOBA+ARTは2008年から青葉区美しが丘の住宅街を舞台に美術展や展覧会、ワークショップなどを開催しているアートプロジェクト。アーティストや建築家だけでなく、地域住民も加わり実行委員会が形成され、毎年イベントを開催しています。

今年のテーマは「美しが丘の特徴的な地域資産である遊歩道の可能性を探る」。美しが丘は郊外都市住宅地のまちづくり手法のひとつである「ラドバーン方式」を採用し昭和30年代〜40年代に開発され、昭和47年には全国で初めて住民発意による「建築協定」を結んだことで知られています。その閑静な住宅地が守られている鍵は、まさにこの地区の特徴である「遊歩道」=「歩行者専用道路」の存在です。今回のツアーでは、建築家やアーティストが制作した作品を巡りながら、「遊歩道」を楽しく歩くためのアイデアを参加者自ら考えていきます。

たまプラーザテラス ゲートプラザ1階ステーションコートに設置されたAOBA+ARTインフォメーションセンターに集合した参加者は30〜40名程度。毎年AOBA+ARTのイベントを楽しみにしている方から、人づてに噂を聞いて初めて参加する方、親子連れなど様々な顔ぶれです。

最初に向かったのは、田園都市建築家の会による「100段にイロドリを」。実際に作品を制作した建築家やアーティストも一緒に歩くので、作品についての説明も丁寧に聞くことができます。

▲カラフルになるだけで上り下りが楽しくなる階段に思わず走り出す子どもたち

 

 

つづいて山本想太郎さんによる「みちの名前プロジェクト」。道が複雑で、自分がどこにいるのか判りづらいという住民の声に対し、「みちの名前」を一緒に考え「遊歩道」づくりに参加しているという意識を高めようと、ミラーを組み合わせ看板を制作しました。擁壁の石積みパターンを模したデザインに、参加者は釘付け。「この通りはどんな名前がいいかな〜」とイメージをふくらませていました。

▲看板には小学生や幼稚園児が多く通ることから「こども通り」と仮に名付けたと、山本さん

 

 

美しが丘は地形に高低差があるので、ツアーはかなりの健脚コースですが、歩いていくと新たな発見や作品との出会いがあるので参加者みんな、がんばって歩きます。

実際に歩いてみると気づく無機質な車止めの多さに、サインや標識として活用するアイデアをかたちにした「車止めにイロドリを」、行きと帰りで歩いている人も、車道から眺めるひとも景色が違う「歩道橋にイロドリを」、夜間の暗い遊歩道をふんわりとLEDキャンドルで演出する「暗さにイロドリを」(以上、田園都市建築家の会)と、歩くからこそ体験する気づきに、アートで軽やかに解決しようとする試みは参加者をうならせます。

▲写真左:見方で歩道橋の色に変化が ▲写真右:サインになると車止めもお散歩の目印に

 

いつも歩いている道にもっと興味を持ってもらえるように、と建築ユニット・イーハンスタジオの岸本泰之さんによって制作された作品「塀(Hey)!WALK」を見学したあと、たどり着いたツアー最後の作品は、建築家の伊藤嘉朗さんによる「みちのいろ作戦」。木でつくられたブロックがいくつも敷き詰められた移動式の細長いテーブル上の屋台が、その作品です。実はこのツアーで歩いた遊歩道は、造成から半世紀近くの年月が経っていることから経年劣化が目立ちはじめており、近い将来に改修が求められる可能性が高まっています。この作品は、ツアー参加者同士が遊歩道の今後の将来像をイメージし、議論することを目的に制作されました。屋台を目の前に、伊藤さんは参加者にある簡単なルールを伝えます。参加者はそれに従い、自由にパターンを作り出していきます。どんな遊歩道なら歩いて楽しいか、より親しみの持てるデザインとなりえるか・・・。子どもたちが目を輝かせ一斉に手を動かすと、あっという間に素敵なデザインが浮かび上がります。これがもし”私が毎日歩く”遊歩道なら・・・。想像が膨らみます。

▲「斜め方向を一色、好きな色にしていこう」というルールでブロックを並べる

 

たまプラーザのあちこちに、昨年までのAOBA+ARTのいくつかの作品は残っています。そんな、まちに溶け込んだ作品を眺めながらインフォメーションセンターまで戻り、無事に約5kmのツアーは終了です。参加者は最後に印象に残った作品、歩いて気づいたことなどをポストイットに記入し地図に貼り付けてツアーを振り返りました。

「近くに住んでいるけど、初めてじっくり歩いてみると知らないことがたくさんあったので、とても面白かった」「まちなかにある作品を見ると心が楽しくなる!」と感想は様々。住宅地の中のアートは、まちへの関心を高めるきっかけとなっていることが伺えます。

AOBA+ARTキュレーターの海老澤彩さんは「毎年、1年にひとつは作品をまちなかに残したいと思い活動をしていますが、今年のツアーは美しが丘らしい遊歩道のデザインのあり方や改修計画への提案に活かせれば」と語ります。今回のツアーから得られたアイデアや、参加者の意見は報告書としてまとめ公開されます。

2017年で10周年を迎えるAOBA+ARTの活動は、今後も目が離せません。

 

取材・レポート=たまロコ 遠藤聖子

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