イベントレポート

2013.11.22(金)

【レポート】AOBA+ART 2013 青葉食堂〜わたしのお庭であいましょうツアー〜

11月10日(日)午後2時。たまプラーザ駅の中央改札前の時計の下に続々と人々が集まってきました。AOBA+ART(あおばあーと)が企画した「青葉食堂〜わたしのお庭であいましょうツアー〜」の参加者たち20名ほどがA・B・Cの3つのグループに分かれ、ツアーが始まりました。参加者同士で自己紹介をしながら、美しが丘の住宅街へいざ出発!

 

……と、その前に、「AOBA+ART」と「青葉食堂」について簡単にご説明します。

 

たまプラーザ駅から徒歩10分強のエリアにある美しが丘3丁目は、大きく立派な家々が立ち並び、ロータリーや遊歩道があったりと、車の往来が少ない閑静な住宅街。美しい街並ですが、階段や坂道も多く、高齢化もすすみ、空き家もちらほら出てきているようです。そんな中、住宅のあちこちにアート作品を散りばめ、住民同志のコミュニケーションを生み出そうという取り組みをしているのが「AOBA+ART」です。横浜アートサイト事業(横浜が魅力的なまちになることを目指し、それぞれの地域で活動するアートプロジェクトの発展と成長をサポートする場)の一環として、2008年の誕生以来、様々なイベントを行ってきました。

 

発足当初から毎年行っているアートイベントのひとつに「青葉食堂」があります。葉っぱの形をした黒板を住宅の門扉にかかげ、住民に夕飯のメニューを公開してもらうというものです。このプロジェクトを企画したのは美術家の池田光宏さん。黒板に書かれたメニューを見て、この家にはどんな人が住んでいるんだろう、ここは一体どんな地域なんだろう……と、通りがかった人にイメージしてもらうユニークなアイデアです。「このメニュー、美味しそう!」「食べてみたい!」という声が多く寄せられたことから、今年の「青葉食堂」では、さらに一歩踏み込んだ取り組みにしたのだそう。ツアー参加者はお弁当箱を持参し、看板が掛かったお宅の中へ実際にお邪魔して、おかずをいただきます。お弁当箱におかずを詰めては、次のお宅へと渡り歩き、最後は完成したお弁当箱で交流会! という何とも大胆で面白い企画です。

 

さて、ツアーに戻りましょう。

 

美しが丘3丁目の住宅街の中をガイドさんについて歩きながら、昨年までの作品である常設のアートや「青葉食堂」に参加している住民の黒板などを見て回りました。黒板を掲げるお宅は今では20数軒あるのだそうです。青葉食堂には2つのルールがあるとガイドさんが教えてくれました。「1、毎日書かなくてもよい。2、ウソを書いてもよい」のだとか。これなら気負わず参加できますね。

 

おかずを提供してくれたこちらのAさん宅では、自分でつくったポテトサラダの説明をしてくれた子どもたちがイキイキとしていたのが印象的でした。「私が作ったポテトサラダ、美味しいと思いますよ!」と嬉しそうに話してくれました。「AOBA+ARTが始まった時、子どもの方がハマったんです。何度も何度も街の中のアート作品を見に行ったりして、すっかり夢中になっていました」と、お母さん。アートというと、何だか難しい大人のものという先入観があったためか、この答えに驚きました。アートは子どもも大人も純粋に楽しむものなんだ、ということを思い出させてくれました。

 

Dさんのお宅では、家の中のアート作品を鑑賞した後、お庭でおかずをお弁当に詰めました。「若いアーティストさんが家まで何度も作品を足を運んできてくれ、孫みたいに可愛くって」とお話されていました。アーティストと住民とのつながりも生まれているようでした。

 

4軒のお宅を訪問し、完成したお弁当がこちら! 中央が「青葉食堂」ツアーでいただいたおかずを詰めたもの。右のは自治会館でいただいた差し入れ。バナナは住宅街を散歩中にゲットしたアート作品のひとつです。

お弁当が完成した後は、美しが丘中部自治会館へ集まって親睦会が行われました。ここでも、自治会の皆さんから美味しい食事の差し入れがあり、音楽あり、映像作品ありと盛り上がりました。

ツアー開始から5時間、楽しい時間はあっという間で、19時にお開きとなりました。

 

主催者の池田さんは、「住民のお宅に一般の参加者を招き入れて料理を提供してもらう、そういったことを交渉するのは大変だろうなーと思っていたのですが、びっくりするくらいすんなり受け入れられたんです。逆に、ツアーのアイデアを出すまでの方が苦労しましたが、とても面白かったですね」と話してくれました。これまでの5年間、地域住民とともに取り組んできた実績があったからこそ、ですね。

 

「誰のためのアートかと言ったら、地域住民のため。住民の様々なニーズに応えようと、音楽・食・いろんな切り口からアプローチできるように今回のツアーを企画しました。発足当初よりも、より地域住民と近しい形でのアート展になるように試行錯誤しています」(池田さん)

 

来年には青葉食堂が1冊の本になるそうです。AOBA+ARTが地域住民と共につくり上げるこれからのアートが楽しみです。

 

写真・文=松岡美和(取材班)

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