イベントレポート
2019.09.19(木)
田園都市で暮らす、働くプロジェクト「第1回 あおば拠点歩き」で、美しが丘西エリアの拠点をめぐりました
次世代郊外まちづくりで進める「田園都市で暮らす、働くプロジェクト」のひとつとして2019年7月6日、地域で活躍している人たちから話を聞く「第1回あおば拠点歩き」を開催しました。地域で何かやってみたい方々に、自らが暮らすまちでの自分らしい働き方、暮らしのヒントを見つけてもらうことを狙いとして全3回開催し、第1回の今回は、たまプラーザ駅やあざみ野駅からバスでアクセスできる美しが丘西エリアの拠点をめぐりました。
book&cafe Nishi-Tei
朝10時、集合場所になったのは緑の多い閑静な住宅街に位置する西の邸宅「book&cafe Nishi-Tei」です。ブックカフェに加え、15畳の和室を使ったヨガや子どもアート教室、着付け教室などに利用されているレンタルスペースほか、店主・岡崎牧子さんの「ハンドメイド作家さんを応援したい」との思いからレンタルギャラリーも併設しています。
岡崎さんは、オーナーさんとのご縁でこの一軒家を借りられることになった際、まだお子さんが小さいために悩んだそうですが、周囲に背中を押されて決意。「10代の頃からカフェをやってみたいと思っていて、アルバイト経験もありますが、就職して、結婚して、子供が生まれて、まさか自分がカフェをやれるとは思っていなかった」と言います。今は、同じく子育て中のスタッフの皆さんと一緒に「できることを精一杯やっていきたい」と、“暮らす・働く”のバランスを取りながらNishi-Teiを切り盛りしています。
今後も「妻・母・そして再び妻と、立場がどんどん変わっていく女性の一生の中で、できることを精一杯やっている方を応援したい。その方が評価されたり依頼されたり、活動が広がっていく場所をつくっていきたい」と語り、この日の参加者からのワークショップの相談にも親身になって応じていました。
フラワーショップ空の箱
Nishi-Teiでほっとする時間を過ごした後は、途中で「保木(ほぎ)薬師堂」に立ち寄るなど歴史やまち並みを楽しみながら歩き、次の拠点「フラワーショップ空の箱」に到着です。扉を開け放した店内で、お子さんをおんぶした店主の大谷明子さんが迎えてくれました。
空の箱は、子どもたちがいつも花と触れ合える環境を大切にしています。毎年開催している「お花屋さん体験」では迎えに来たお母さんをお客に見立て、レジ打ちなどもして自分がつくったアレンジメントを子どもたちが販売します。「夏は暇なので始めたんですが、おじいちゃんやおばあちゃんがわざわざ買いに来てくれたり、子どもたちが毎年心待ちにしてくれたりして、意外と奥深いんです」と話す大谷さん。
地縁の薄い新興住宅地で「親だけ、友達だけ、近所だけはない、地域の大人の見守りをお店がやってくれるのはうれしい」という保護者の声は、大谷さんの励みになっています。七夕前日のこの日、大谷さんはイベント参加者に笹をおすそ分けしてくださいました。
美しが丘西地区センター
次の訪問先は、美しが丘西地区センターです。会議室や料理室、音楽室、図書コーナーを備え、サークル活動だけでなく個人も楽しめるコミュニティ施設です。プレイルームもあり、赤ちゃんとゆったりした時間も過ごせます。また、センター独自のイベントも多数開催されているほか、地域活動のチラシも多数並んでいます。同行していた横浜市青葉区役所の伊藤さんからは、区内の地区センター、コミュニティハウス、地域ケアプラザといった地域活動を支援する拠点の紹介がありました。
Cafe BLanCo
次の訪問先は、中米産コーヒー豆焙煎店「Cafe BLanCo」です。店主の井口直之さんは、「職人気質で一つのことをとことん突き詰める自らの性格を活かせる仕事を」と考えていた頃、師匠となるコーヒー店主との出会いを機に、脱サラして奥様とお店を始めました。仕込みは営業中に行い、残業はなく自宅からは徒歩通勤。ワークライフバランスのとれた暮らしに変わったそうです。
近隣の個人店とのコラボレーションを積極的に行うほか、子ども向けの職業体験も行っています。「いまでは、窓越しに下校途中の子どもと会話するのが日課です。今日から水泳が始まった、など他愛もない話ですが、地域の中で生きているんだなあと感じます」と井口さん。一方、「中米産のコーヒー豆に対する情熱は師匠にも負けない」と熱い気持ちも語り、参加者からは起業の流れや資金など具体的な質問が飛び交いました。
平津SUNサロン
最後に訪れた拠点は、地域住民の思いをかたちにした集会所「平津SUNサロン」です。美しが丘西部自治会は300世帯の自治会で、近くにも住民が集まれる施設がないことから、自治会で建設費用を少しずつ積み立てながら公園内での建設を30年にわたって請願し、「ヨコハマ市民まち普請事業」の助成金を受けて2011年ついに開所しました。
現在の会長は、一級建築士の資格を持つことから当時の建設委員を務めた西岡麻里子さんです。「自治会に入る前は悪いイメージしかなかったんですが、古くから住んでいる方々が温かく受け入れてくださり、フラットな関係で意見を言い合えます」と語ります。平津SUNサロンは自治会の枠を超えて誰でも利用でき、週に3~4回は利用されており、日常の運営を自治会役員らが協力しあって担うことで常駐者を置かず、閉館時でも申込みできる仕組みをつくっています。
近隣自治会からベビーカーを押してやってくる方がいる一方、自治会内の住民に告知が行き届かないこともあり、「課題は山積みです」と副会長の宮本恒軌さんは言います。「地域にはいろんな力を持った人が眠っている。例えば“ホームページならつくりますよ”といったように、いろんな人が地域に入ってくれるとうれしい」と強調しました。
WISE Living Lab
すべての拠点を巡った後は、次世代郊外まちづくりの共創スペース「WISE Living Lab」でこの日の振り返りを行いました。今回の参加者は、すでに自宅サロン始めた人、地域に貢献できる仕事で起業したい人、現時点でまだ地縁のない人など様々です。「現場を見てオーナーさんの声を聞けてよかった」「自分の事業とコンセプトが似ているので参考になった」「事業計画も必要だが、地域の人とのつながりの重要さを実感した」といった感想が聞かれ、次のアクションにつながるヒントが得られたようでした。