イベントレポート
2019.11.25(月)
「第2回地域で活躍している人に会いに行こう!」で、
藤が丘エリアの拠点をめぐりました
2019年10月26日、地域で活躍している人たちから話を聞く「第2回あおば拠点歩き」を開催しました。この拠点歩きは、次世代郊外まちづくりの2019年度活動方針「田園都市で暮らす、働く」のもとで開催されるイベントやセミナーのひとつです。地域で何かやってみたい方々に、自らが暮らすまちでの自分らしい働き方、暮らしのヒントを見つけてもらうことを狙いとして全3回開催し、第2回は藤が丘エリアの拠点をめぐりました。
Revive-Recipe TENZO
朝10時に藤が丘駅前公園に集合した一行が最初に訪れたのは「Revive-Recipe TENZO(リヴァイヴ-レシピ テンゾ)」です。TENZOは、駅前のイタリア料理店「ナチュラーレ・ボーノ」を経営する植木真さんが、「新鮮な野菜は香りが違う。地元のおいしい食材を地元の人にもっと食べてもらいたい」と始めた惣菜店です。その背景には、市内で生産される野菜の約4割が規格外や売れ残り、あるいは人手不足などの理由で廃棄されている現実があります。
植木さんは近隣の農家さんや直売所を回って採れたて野菜を仕入れています。レシピを考えて調理するのは、店長の北嶋さんをはじめ、子育て真っ最中のママから70代の主婦までの地元の女性です。中にはパティシエや、TENZOで働きながら菓子工房を開いた人もいます。そんなスタッフの企画で、定休日を利用したスイーツイベントを毎月開催しています。
またTENZOでは、管理栄養士の小川さんが監修し、区内の女子サッカークラブ「日体大FIELDS横浜」にアスリート弁当を提供しています。お子さんが小さい小川さんは、調理場には立っていませんが、スポーツ栄養学の知識を活かして次世代の女性アスリートを支えることにやりがいを感じています。TENZOを中心に、農家さんが助かり、女性が地域で活躍し、地元野菜が地域の人に届くというエコサイクルが形成されています。
ユートピア青葉・もえぎ野地域ケアプラザ
次に訪れたのは、地域の福祉・保健の拠点である「横浜市もえぎ野地域ケアプラザ」と、高齢者の居場所や趣味・仲間づくりをサポートする「老人福祉センター 横浜市ユートピア青葉」の複合施設です。ここでは介護予防の体操教室のほか、趣味の教室を多数開催しています。広々とした館内には個人や団体で使える部屋もあり、高齢者だけでなく子育てグループの利用も多く、ケアプラザの看護師・鳥井聖子さんによると来館者は一日に200~250名にもなるそうです。
しかしながら、坂の多いエリアのため来館できない人もたくさんいます。そこで鳥井さんたちが地域へ出向いてハマトレ(横浜市が開発したロコモ予防のトレーニング)講座を行っています。青葉区でも2040年には3人に1人が65歳以上になると予想されており、介護予防は地域づくりにおいても大きな課題です。
ユートピア青葉を後にし、途中で「もえぎ野公園」を通りました。樹木が多く、中央には区内で一番大きい池が広がります。池にかかるデッキは水面に近く、水の中を観察するのも楽しい場所でした。
カフェ・ギャラリー リンデン
もえぎ野公園を通り抜けて坂を上がっていくと、シンボルツリーの菩提樹(リンデン)が庭にたたずむ、白壁の「カフェギャラリー・リンデン」が見えてきました。店主の近藤典子さんは「私は美大出身でもない普通の主婦。『起業しよう!』というわけではなかった」と言います。けれどもご自身が一枚の絵に救われ、子育てを終えた50代半ばに一生楽しめることをしようと考えたときに思い浮かんだのが、ドイツの一般家庭で目にした、玄関やリビングに飾って日常的に楽しまれていたアートでした。
リンデンでアートと過ごす時間を「自分と向き合う時間」にしてもらいたいと、心がゆったりできる空間づくりに努めている近藤さん。当然のことながら維持するのは大変です。加えて関係者との調整など、外から見えない作業も山積みです。「一人でやっているので運営は大変。失敗もあるし、お勉強やお付き合いにもお金がかかる。でもアートを通じた『出会い』は計り知れない。お金に変えられない楽しさです」。
近藤さんは、上手いだとか有名だとかではなく、アートへの向き合い方を見て作家を受け入れています。「最近は私にない発想を持っている若い人との出会いが増えました。最初は分からなくても、いろいろ聞いているうちに『なるほどな』という発見がある。皆さんも『あれ?』と思ったら、ぜひ作家に話を聞いてみてください」。近藤さんのアートに対する情熱とアーティストへの愛情を存分に感じた訪問でした。
2 bananeira.
最後に訪れたのは、窓ガラスに書かれた「もっと野菜を食べよう!」が目を引くヴィーガンカフェ「2 bananeira.」(ドイス・バナネイラ)です。
店主の加藤美緒さんは、オーガニックの総合商社で日本の伝統的な食や農、さらには自然環境などについて学びながら、「自分にできることは何か」をゆっくりと考えていたそうです。そしてあるとき、神奈川県秦野市の豊かな自然のもとで農家さんが無農薬・無化学肥料で苦労してつくった野菜の持つエネルギーに感動。商社を退社してオーガニックカフェで経験を積んだ後、bananeiraを2017年3月にオープン。「ヴィーガン(完全菜食主義者)のカフェなんて、逆立ちしたってできないよ」と言われ、「とりあえず逆立ちだだけでもしよう」とカポエイラ(ブラジルの格闘技)の逆立ちの技「バナネイラ」を店名にしました。
「お客様の8割以上はヴィーガンではないと思いますが、ヴィーガンをキーワードに温暖化対策や環境保全、動物愛護、健康志向など関心の異なる人が訪れ、そのつながりでまた素敵な人を紹介していただき、じわじわと交流の場になってきました」と加藤さん。本当の豊かさとは何かを考えながら、太極拳や米づくり、アイヌ刺しゅう、音楽ライブ、さらには婚活会など、衣食住にかかわる各種イベントを展開しています。
加藤さんのお話を聞いた後、希望者が残ってランチをいただきました。植物性100%なのに味に奥行きがあるのは、長年イタリア料理店で素材の旨味を引き出すことに取り組んできたシェフの中西弘章さんのなせる技。加藤さんとは犬友達として知り合ったそうです。
参加者からは、「地域で生き生きと働いている人を直に感じられた。自分が動くことが大事だと思った」「いつもは客として利用しているが、経営者としての皆さんの話を聞いて『藤が丘愛』がますます強くなった」「将来地域のつながりを重視して起業したいと考えているので、いい刺激になった」といった感想が聞かれ、この日の出会いを今後に生かしたいと感じたようでした。