イベントレポート

2013.12.13(金)

美しが丘中学校での特別授業「シビックプライドについて」

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秋も深まり、小雨がぱらつく11月2日、モデル地区内にある美しが丘中学校にて、3年生を対象にしたシビックプライドについての特別授業が行なわれました。講師は次世代郊外まちづくりではお馴染みの東京理科大学の伊藤香織准教授。2004年以降、日本、そして世界の195都市を調べてきたという、都市デザイン研究の専門家です。今回の講義は、中学校の授業の一環となりますが、地域住民の方も聴講することができ、生徒以外に20名ほどの参加者がいました。

あなたは自分の住むまちが好きですか?

まずはじめに、伊藤先生から、4つの質問が投げかけられました。

Q1 あなたは自分の住むまちが好きですか?
Q2 このまちのことを自慢に思いますか?
Q3 このまちで生活していて楽しいですか?
Q4 あなたはこのまちに必要とされていると思いますか?

最初の質問では半分ぐらいは挙がっていた手が徐々に減り、最後の質問「あなたはこのまちに必要とされていると思いますか?」になると、手を挙げたのはたった3人でした。そこで「今日は“みなさんがこのまちには必要です”という話をしたいと思います」と伊藤先生。

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次にシビックプライドの説明がありました。シビックプライドとは、都市に対する誇りや愛着のこと。シビックプライドをよく表している言葉として「you are your city(あなた自身が、あなたのまちなのです)」という言葉が紹介されました。

「たとえば、自分の部屋に、ゴミやガムを捨てたりはしませんよね。それなのになぜ、外では捨ててしまうのでしょうか? それは、まちを自分の場所だと思っていないからです」

まちを自分の場所だと思う、それはいったいどういう感覚なのでしょうか?

まちは、みんなのものだけど、私のものでもある

ポートランドは、まちの中央にパイオニア・コートハウス・スクウェアという広場があります。これは、1980年代に市民の寄付によって実現した広場で、レンガのひとつひとつには、寄付者の名前が刻まれています。これによって「この広場はみんなのものだけれども、私のものでもある」という意識をもつことになり、今もその誇りをもつ市民が大切に利用しています。
ここで、アメリカのポートランドと富山市の事例が挙げられました。

富山市では、路面電車にメッセージを書いてもらったり、ラッピング作業をお手伝いしてもらうことで、高校生にもまちの景観に参加するという意識をもってもらいました。また、駅構内では、その駅の場所性を表現するビジュアルデザインを掲示し、スポンサーを募りました。いわゆる広告とは違い、ビジュアルの下に「このスペースは○○の協賛によって作られました」と小さく記載されるのみですが、すべての駅のスポンサーがすぐに集まりました。

これは、企業がまちを支えよう、自分たちもまちの一員だという意識があるからではないか、と考えられます。それが結果的に、企業のイメージアップにも繋がっていきました。

私の場所は、誰のもの?

ここで伊藤先生より、再度質問がありました。
「私の場所は、誰のもの? 答えは、私の場所だけどみんなのものでもある、です」

ここでも、いくつか事例をお話してくださいました。古い町並みを活かしたまちづくりで知られる長野県小布施町では「小布施オープンガーデン」という取り組みが進められています。これは、自宅の庭を開放し、誰でも自由に観賞できるようにするというもの。これによって「内は自分のもの、外(庭や外観)はみんなのもの」という意識が育っていきます。

そして美しが丘地区もその意識をもつまちのひとつだ、と伊藤先生。美しが丘地区は、1972年に全国初の住民発意の建築協定が結ばれ、敷地面積、建物の高さ、側面位置、自動車の出入りなどに関する取り決めがなされました。また、2003年には、大多数の住民の総意で「青葉美しが丘中部地区地区計画」も施行されています。これは住民自ら、自分のものでもあるまちの景観を、よりよくしていこうという思いがあるからにほかなりません

私のやりたいことがまちを助ける、かもしれない!?

そして、「私にできることや私のやりたいことがまちを助ける、かもしれません」と続きます。

全国的ブームとなった朝の連続ドラマ小説「あまちゃん」では、主人公の天野アキが、アイドルという自分の夢を叶えながら、地域活性化にも貢献しています。

新潟県の上古町商店街では、シャッタータウン化した商店街に惹かれた若者が、オリジナリティのある店舗を次々に展開して話題となり、今では空き店舗がほとんどないまでに賑わうようになりました。

自分のやりたいことが誰かのためにもなることは、珍しいことではないのだそうです。

「最後に宿題を出します。ひとりひとり、じっくり考えてみてください」

Q5 あなたの特技や趣味の知識で、まちを変えるアイデアはありますか?
Q6 あなたが将来の夢を叶えたとして、まちを変えるアイデアはありますか?

じつは伊藤先生、中学生の前で講義をするのは初めての経験だったとのこと。ちゃんと伝わるだろうかという不安もあったそうですが、約1時間の講義の間、集中が途切れることもなく、みんなじっと、伊藤先生の話に耳を傾けていました。自分たちの住むまちのことを、改めて考える良いきっかけになったのではないかと思います。

未来のまちの担い手になるかもしれない子どもたち。宿題の答えにどんなものがあるのか、とても気になります。


次回は3月上旬に特別授業を行う予定です。
詳細は決まり次第、改めてHP上でご案内いたします

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