イベントレポート

2015.03.25(水)

地域医療を語る会 第3回市民公開講演会が開催されました

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寒気も少しずつ緩みはじめた2月28日、青葉区医師会•青葉区メディカルセンター主催、青葉区医療・介護連携の地域包括ケアシステム推進部会共催「地域医療を語る会 第3回市民公開講演会」が開催されました。

この講演会の第1回目のテーマは「ワクチン」、第2回は「災害時医療」。そして、第3回目を迎えた今回のテーマは「ご存知ですか?『地域包括ケア』~住み慣れた街で、最期まで自分らしく生きるために~」です。

少子高齢化が進むにつれて、介護の問題は社会的にも大きな課題となっています。在宅医療の仕組みができておらず、医療・介護に係わる専門職の連携が十分にとれていないことから、在宅療養への速やかな移行がなされず、その狭間で苦労をされているケースも増えてきています。それらを解決していく方法として、横浜市と東急電鉄による「次世代郊外まちづくり」のリーディングプロジェクトで整備されてきたのが医療・介護連携の地域包括ケアシステム「あおばモデル」です。その概要や今後について、お住まいの青葉区民の方々により詳しく知って頂くため、本講演がスタートしました。

これからの超高齢社会に向けた実態

前半は青葉区役所の高齢・障害支援課長、小林野武夫さんのお話から始まりました。

現在の将来推計人口によれば、日本は人口減少の時期に入っており、2060年には65歳以上の人口が40%に達すると予想されています。一般的には、65歳以上の高齢者人口比率が7〜14%で高齢化社会、14〜21%だと高齢社会、21%以上は超高齢社会と位置付けられています。つまり、日本では今後、「かつてない超高齢社会が到来する」ということになります。

では、青葉区はどうでしょうか? 現在の青葉区の人口は、2014年3月のデータで、総人口約30.6万人に対して65歳以上の人口は約5.6万人、高齢化率18.2%の高齢社会です。これが2025年になると、総人口約31.1万人、65歳以上の人口が約7.3万人で23.3%の高齢化率となり、超高齢社会を迎えます。日本全体に比べればまだ高齢化率は低いものの、今後、高齢化率の急な進行が見込まれ、人口が多い分、医療・介護サービスに対する需要も、急激に高まっていくと考えられます。

それに加えて、核家族化が進み、高齢者のひとり暮らしも増えています。これまで高齢者の暮らしを支えてきたアニメのサザエさんのような「多世代同居」というシステムは、機能しなくなりつつあります。
このような状況を踏まえ、高齢者を支える地域の医療・介護専門職の連携を強化し、新しい体制を整えていくことが急務となっています。

郊外型地域包括ケアシステムのあり方

平成25年度に横浜市が実施した高齢者実態調査によると、65歳以上の高齢者の約5割(53.1%)が「介護サービスを利用しながら、自宅で暮らしたい」、約1割(9.6%)が「介護サービスを利用せずに自宅で暮らしたい」と回答しています。しかし家族による在宅介護は、第三者が介入しない安心感がある反面、家族だからこそ抱えてしまうストレスもあり、介護者の肉体的・精神的負担が大きくなります。

そこで、介護をする方々がひとりで抱え込まずに、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問介護、通所・短期入所などの連携による手助けを受け、前向きに介護に取り組んでいく環境をつくることが重要になります。それらを支える仕組みとして構築されたのが、医療・介護連携の地域包括ケアシステム「あおばモデル」です。

 地域包括ケアシステムとは、高齢者が地域内で自立した生活を送れるよう、その人の状態や状況に応じた医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスなどを切れ目なく提供するシステムのことです。自立、介護、療養、看取りなど、高齢者のステージによって、必要なサービスが一体的に受けられる体制を目指します。

「あおばモデル」は、日本でも極めて先進的な事例として、医療・介護に係わる多職種の連携によるケア体制の構築を進めています。

地域包括ケアシステムの導入

後半の青葉区メディカルセンター理事長、西川真人さんのお話では「次世代郊外まちづくり」で2012年から横浜市と東急電鉄が取り組んできた医療・介護連携の地域包括ケアシステム構築のプロセスが紹介されました。

まず、地域包括ケアシステムを検討すべく、2012年11月に「横浜市青葉区医療・介護連携の地域包括ケアシステム推進部会(通称:ケア部会)」が発足しました。

在宅医療では、主治医、訪問介護事業所、歯科医師、調剤薬局、入浴サービス、ヘルパー、ケアマネージャーといった各分野の多職種連携は必須です。そこで、在宅医療の仕組みづくり、クラウドを活用した情報共有システムの構築など、医療や介護、在宅医療の相互連携を図るべく、ケア部会の議論を経て、青葉区役所の「顔の見える場作り会議」と青葉区医師会の「あおばモデルワーキンググループ」を設置し、毎月打ち合わせを行いました。

なかでも注目したいのが、すでにテスト運用が始まっている多職種連携クラウドシステムです。

従来、各機関が患者さんの情報を共有するために使用していたのは、ご自宅にある「連絡ノート」が主流でした。しかし連絡ノートは患者さんの自宅に出向かないと情報が得られないという難点があります。そのため、情報の既得性、即時性といった課題には答えることができませんでした。

 そこで、即時性に優れ、かつ安全に情報共有ができるクラウドシステムへの切り替えを実施しようと、横浜市からの補助金でシステムの整備を行い、42台のiPadを導入しました。スマートフォン、パソコン、タブレット端末などからアクセスでき、いつでもどこでも安全に活用できるクラウドシステムは、多職種連携がカギとなる地域包括ケアシステムにおいて、重要な役割を担います。

テスト運用では、青葉区内の在宅主治医12名にシステムを利用してもらいました。心電図、血液検査の結果など、患者さんの情報画像をスマートに共有できること、患者さんや多職種スタッフの日々の情報が共有できることで、連携力強化につながったことが実証できたそうです。

「あおばモデル」の将来像

 この結果を受けて、今後、多職種連携クラウドシステムの本格的な導入を進めていきます。4月からは、青葉区全域においてクラウドシステムのテスト運行を予定しています。「あおばモデル」の趣旨に賛同する区内の医療・介護に関係する事業所であればアカウント取得が可能となるため、クラウドシステム活用の幅はますます広がっていくことでしょう。

 そのほかにも、2015年1月に「青葉区在宅医療連携拠点」が稼働し、病院と診療所、医療機関と介護関係事業所といった連携体制の整備を始めています。2月からは、容態が急変した在宅患者の入院調整をスムーズに行う、在宅医療のバックベッド確保モデルも始まりました。区内病院の空床情報を把握し、連携拠点が転院をサポートする体制をテスト中です。

 講演会の最後には、地域包括ケアシステムの流れを具体的に理解していただくため、「多職種で支える在宅医療」と題し、ロールプレイ形式の事例紹介を実施しました。各職種の代表者が役に扮して、在宅医療・介護に対して家族が抱える不安や負担を軽減する措置や、介護保険の活用、クラウドシステムへの家族参加、訪問入浴の利用といった、より具体的な状況での対応がわかりやすく紹介されました。

 近い将来に迎えるであろう、超高齢社会。しかしそうなっても、青葉区民の誰もが安心して青葉区で暮らせるよう、青葉区が地域包括ケアに率先して取り組んでいることが実感できた講演会でした。

 

参加者の感想

40代/女性
親を介護しなければいけない年齢になってきているので、とても参考になりました。在宅医療が理想ですが、私自身の生活も考慮した上で、いざというときにスムーズに対応できるよう、選択肢についての情報を収集しておきたいと思っています。

60代/男性
将来の医療体制を知ることができました。とても理想的な在宅ケアシステムだと思います。ただ、訪問介護、ヘルパー、訪問診療といった役割の棲み分けを、もう少し明確に知りたいですね。クラウドシステムは、家族も参加できるし、画期的だと思いました。患者自身もクラウドに参加できるといいですね。今後どのように普及がなされていくのか、期待しています。

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