イベントレポート

2015.03.25(水)

第7回 次世代郊外まちづくり ラーニングカフェを開催しました

420270

一雨ごとに春を感じる3月1日、三丁目カフェにて「第7回 次世代郊外まちづくり ラーニングカフェ」が開催されました。これまでは平日の夜に開催してきたラーニングカフェですが、今回は初めて、日曜日のお昼過ぎの開催となりました。

今回のテーマは「公共空間のにぎわいづくり 〜公的資源の有効活用を考える〜」。講師は、特定非営利活動法人GPネットワーク副理事長の山下裕子さんです。全国まちなか広場研究会や株式会社ハイマート久留米でも活躍されています。

週末稼働率ほぼ100%のまちなか広場「富山グランドプラザ」とは?

山下さんは、コンパクトシティ政策の先駆都市として注目され、中心市街地活性化の成功例として知られる富山市で、再開発に伴って誕生した富山グランドプラザという公共のまちなか広場の運営を手がけています。富山グランドプラザの週末貸し出し稼働率はなんとほぼ100%! 全国でまちなか広場の良さが改めて見直されるきっかけにもなりました。また現在は、福岡県久留米市に転居し、商店街を再生するまちなか広場の新規事業室でも活動を始めています。

「まちにとって広場とは<にぎわいの核><まち歩きの拠点><まちの情報発信基地>。富山グランドプラザは、まず、市街地の中でもいちばんの中心に整備しました。百貨店と、百貨店の駐車場の間に位置し、車社会の富山市では、市街地にきたら、まず最初に降り立つ場所となっています。また、雨や雪が多いため、ガラス貼りの屋根を取り付け、全天候型広場としました」と山下さん。

「いつも楽しげな場所であるように、土日祝日は、とにかくイベントをやり続けました。あそこに行けば何か楽しいことがあるという雰囲気をつくったんですね」
一方で、まちなか広場はただのイベント広場ではない、とも考えたそうです。

「広場はまず、住民にとっての憩いの場であるべきだと思います。土日祝日よりも平日のほうが日数的には多いんです。

だから、目的がなくても居ていい場所、居心地のいいリビングルームにしていくことを考えました」

活気が生まれる場所づくりの秘訣

たとえば、気軽に立ち寄って休めるように、広場には椅子とテーブルは必須アイテムだそうです。

「子どもの居場所になっていることも大切です。子ども向けの積み木広場を常設することで“ここは子どもがいてもいい場所”という認識が生まれ、子どもにとってもお母さんにとっても、安心で楽しい場所となります。

子どもが増えると、それだけで広場は華やぎ、活気が生まれます。さらには、高齢者が椅子に腰掛け、子どもたちを見てニコニコしている姿をよく見かけるようになりました。広場があることで、多世代が出かける機会を創出しているのです」

ちなみに、椅子やテーブルの配置を変えるだけでも、利用者にとっては変化が生まれ、楽しみに繋がります。積み木は、ただ放置されていても、誰もそこで遊びたいとは思いません。面倒でも毎日出し入れして大切に扱うことが、賑わいに繋がる大切なポイントなのだそうです。場所づくりには、こうしたちょっとした気遣いも、とても大切になってくるのです。

使用料があることで賑わいも大きくなる

高校生のダンス発表会、地域の盆踊り、就職相談会やフラダンスの発表会、ワールドカップのパブリックビューイングなど、イベントの内容はじつに多種多様です。利用は市内在住者に限っていません。いちばん遠い利用者はなんと石垣島からマンゴーを売りにきたのだそうです。そして、たとえどんなイベントでも、使用料は必ずいただくのがグランドプラザのルールです。土日祝日は全面終日使用で20万円。平日は7万円です(冬期割引あり)。けっして安くはありません。

「それでも土日祝日はほぼスケジュールが埋まっています。使用料がかかっても、イベントをやりたくなるような場所になっているんです」

使用料を徴収することで、当然、運営は安定します。運営が安定すれば、常に活気があり、にぎわいづくりに意欲的に取り組むことができます。一方、使用料を支払ってもやりたいイベントは、意気込みが違います。お金を集めるために横の繋がりが生まれることもあります。使用料が発生することは、運営側にとっても利用者側にとっても、じつはメリットが大きいのです。

「楽しげな人が多ければ楽しい場所になるし、寂しさを感じている人が多かったら、寂しい場所になります。広場は、その地域の今を映す鏡です」

山下さんが感じたたまプラーザの魅力

途中、たまプラーザの話も出てきました。山下さんは、講演を行なうときは、必ずその地域を歩いて回ることにしているのだそうです。この日も雨の中、講演前にたまプラーザのまちを歩いて回りました。「違うまちの人と一緒に、自分の地域を歩いてみると、今まで気づかなかった魅力に気づくことができますよ」と山下さん。

「たまプラーザは、なんといっても歩行者空間が充実していることに感動しました。これは充分に、これからのこのまちの魅力になるのではないでしょうか。強いていえば、せっかく歩行者空間が充実しているので、椅子がもっと設置されていればいいなと思いました。それと地形上、どうしても起伏が多いので、その点は考える必要を感じました。たとえばなんですけど、駅に靴のロッカーを作ったらどうでしょう? 駅まではスニーカーできて、駅でヒールに履き替える。そうしたら、すごく楽だと思いませんか?」

思いつきそうで思いつかなかったアイデアに、みなさん(特に女性は)感心したように大きくうなずいていらっしゃいました。

たまプラーザにも、公共空間はたくさんあります。多くの可能性を秘めた空間をどう活用し、どんなまちの中心としていくのか。山下さんのお話を聞いていると、そんな未来のまちの姿が自然と想像されて、とてもワクワクさせられました。

本文関連サイト
■特定非営利活動法人GPネットワーク

参加者の感想

I.Gさん(40代/男性)
仕事の参考のために参加しました。富山市が進めている住民が参加しやすい環境づくりは、参加のハードルを下げることに繋がっています。そうすると企画自体も大事だし、それをうまく使いこなせるような仕組みづくりも大事になってくると感じました。

Y.Kさん(30代/男性)
生まれも育ちもたまプラーザです。ちょっと前に、ラーニングカフェのことを知りまちづくりにも興味があったので、きてみました。とても楽しかったです。みなさんがやっているみたいに人前に出るのは苦手なので、そういうことをしなくても協力できることがあれば、ぜひ参加していきたいと思いました。

イベントレポート一覧に戻る

メニューを閉じる