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イベントレポート

2012.12.25(火)

「次世代郊外まちづくり」たまプラ大学 その2「まちの保育園 〜地域コミュニティの現場から〜」

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冬の寒さも本格的になり始めた11月20日、たまプラ大学その2「まちの保育園〜地域コミュニティの現場から〜」が開催されました。今回お話を伺ったのは、練馬区で地域密着型の保育園を開いた松本理寿輝さん。子育てがテーマとあって多くの女性が出席しました。子どもたちを取り巻く児童保育の問題や、地域の住民が町ぐるみで子育てをすることの大切さ、「まちの保育園」が実践するさまざまな工夫など、これからのまちづくりを考えていく上で、とても学びの多い場となりました。

子どもをまちぐるみで見つめる「まちの保育園」

2011年の春に練馬区小竹町にオープンした「まちの保育園」は、地域の人々に開かれた保育園。日々多くの人が訪れます。ここを始めた理由を、松本さんはこう話します。
「最近、子どもの教育の現場は安全のためにどんどん閉ざす方向にあります。もちろん安全は守らなければならない大切なことですが、0歳から6歳というのは、人間性を育む上でとても大切な期間。その間、保育園の園児たちは家庭と保育園の往復の生活で、子どもたちが接する大人もとても限定的です。保護者と保育者だけでなく、もっと様々な大人が子どもたちの成長に関わることができる、地域に開かれたコミュニティの中での子育てができないかと考えました。」

例えば子育てを終えたお母さんたちや団塊世代、学生など、地域の人々が子どもに関る試みです。母親にとっても、子育ての先輩が近くにいることは、大きな安心につながるもの。
日本では家庭が孤立化していて、母親が子育ての悩みを誰とも共有できなかったり、負担を一手に抱えることが多く、出生率の低下にもつながっています。
海外ではフランスなど、政府の積極的な介入によって、出生率が大きく改善した事例も。結婚せずとも子どもをつくりやすいようにしたり、学生のベビーシッターを推奨するなどさまざまな対策が打たれ、平均出生率は2.03人まで上がっています。

 

どんな保育園か?設計の工夫

「まちの保育園」をつくるにあたって、松本さんがまず考えたのは、開かれた場所でありながらも、子どもの安全をどう確保するか、という問題です。その一つの解決策は、誰でも入ることができるオープンなスペースと、顔を確認した人のみが入室できる保育室を分けたことです。通りから見て手前にコミュニティカフェがあり、誰でも気軽に入ることができますが、その奥の保育室との間には通路があり、しっかりと空間が隔てられているのです。ほかにも、造りや運営面でさまざまな工夫が凝らされています。例えばカフェも保育室もすべてガラス張りで見通しがよくなっている一方で、子どもが見られている感じを抱かないように、室内の床を地上レベルから1メートル下げるなどの工夫が施されています。

一方、子どもたちが町の人々と交流できる場がカフェやギャラリー、園庭といったスペースです。「まちのパーラー」として始めたカフェでは、近所の人々が毎日気軽にここへ立ち寄れるきっかけにと、パンの販売も行っています。昼間は幼稚園のお母さんたちのママサロン、夜は手づくりソーセージなどを振舞うバル風に。仕事帰りのお父さんたちにとってもいい交流の場となっています。
松本さんたちがこの保育園をつくるうえで意識したのが、大人も落ち着ける空間にすることでした。園内を子どもじみた装いにせずに、経年劣化が味になるレンガや木を使って居心地のよい場をつくっています。

三つの力〜私たちの「子ども観」「保育観」~

「まちの保育園」を運営する上で、松本さんたちが大切にしている保育観があります。それは次の三つの力です。
一つは「子どもの力」。子どもは生まれながらにして潜在力の塊。大人の概念に当てはめるのではなく、子どもが本来もつ好奇心を尊重します。例えば粘度遊びでは、まず「粘土って何だろう?」を体感してもらうために、自由に粘土に触れてもらいます。そのうちに子どもたちは思い思いのものをつくり始めます。自分で選び、自分で好奇心を満たすこと。そんな学びの原点を身につけることを重視するのです。
二つめは「対話の力」です。保育者と保護者、保育者同士、子どもと保育者など、お互いに思いを交換し、話を進めるプロセスを大事にします。保護者同士が集まる場も、真剣なものからライトな場まで様々に用意。常に開かれた対話をし続けていくのが大切と考えます。
三つ目が「コミュニティの力」。保育者や保護者に偏らず、子どもたちには多くの人と接してほしい。園には日芸の先生が遊具をつくりに来たり、音大生がコンサートを開いたり、町内会の行事に子どもたちが参加するなど、町の人々との交流が盛んに行われています。

画期的な取り組みが行われている「まちの保育園」ですが、従来の日本の保育の枠組みも大切にしています。園長として迎えたのも、公立の保育園で40年以上働いてきた方。日本の保育は、養護と保育を一体化した先進国のなかでも評価されつつある方法に近く、世界に誇れるものだと言います。
今「まちの保育園」は、東京都認証の私立保育所で、役所から補助も受けており、保育料は大まかに月6万円前後(年齢や形態によって異なります)。近く2軒目を六本木にも開く予定です。共感してもらえる保育園とアライアンスを組んで、学びを共有し合う形も考えています。

「子どもは大人をつなげる力があります。子どもが町に出ていくことで、さまざまな大人も交わり、町全体が豊かになっていくと思うんです。」そう話す松本さん。「まちの保育園」が単に保育だけにとどまらず、「子どもの力」を通じてコミュニティを育み、まちづくりにもつながっていき、そして、子どもの力でつながったまちやコミュニティぐるみで豊かな子育てをしていくことを目指して実践されていることがとてもよくわかりました。

「ここを卒園した子どもが、今度は子どもをつくってまた戻ってくることが夢」、と話した松本さん。優しくソフトな語り口のわかりやすい講義でしたが、そこには松本さんの力強い情熱があふれています。お年寄りから若い世代、そして子どもたち、多世代がいきいきと暮らし、持続、循環していく「まちとコミュニティ」の実現を目指す次世代のまちづくり。そこには豊かな子育てがなくてはならないものだ、ということを強く感じさせてくれるお話でした。

参加者の感想

Y.Wさん(40代・女性)
私自身、保育園に子供を預けていたワーキングマザーだったので、松本さんの「まちの保育園」には大変興味を覚えました。幅広い世代の人が関わって、地域で子供を育てることは、多くの人が大切だと思いつつも、その一歩をどう踏み出せばいいのかわからない状態が続いています。そんななか、松本さんの取り組みはたまプラーザにおいてもぜひ参考にしたいモデルだと思います。
乳幼児を抱え、子育て真っ盛りのファミリーは、「こうしてほしい」「ああしたい」という思いがあっても、日々の生活に追われてしまい、発信したり、行動に移したりはなかなかできないもの。だからこそ、先輩パパ&ママの私達がこれまでの経験を生かして動き出すべきなのではないか? そんな思いに駆られたお話でした。

Y.Mさん(30代・女性)
松本さんのお話を聞きたくて、今回初めて参加しました。保育のことだけでなく、子育ての本質を考えて運営されている点がすばらしいと思います。保育園の数は多くなってきておりますが、親として「ここなら安心してお任せできる!」という保育園を見つけるのが難しいと感じています。たまプラーザにもこんな保育園が出来たら、是非子どもを通わせたいです。

N.Mさん(60代・女性)新聞で松本さんのことは知っていたので、今日はとても期待して来ました。私自身はもう子育て終わってしまいましたが、たまプラーザにもあんな施設ができたらすごくいいと思います。想像以上のお話を聞くことができました。建物のことなんかもまたじっくり調べてみたいと思います。

S.Kさん(70代・男性)松本さんが素晴らしい、その一言に尽きる。子育てに対する、時代の保育園の経営者というよりも、保育科学の研究を行っているような感じでしょうか。地域によって色々ニーズは違いますが、たまプラーザでも同様のことをトライしてみることも必要ではないか。最近は子どもの安全安心を重視しすぎて少し行き過ぎているのかもしれないと思いました。

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