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イベントレポート

2013.02.25(月)

「次世代郊外まちづくり」たまプラ大学 その3「生活者視点のスマートコミュニティって?」

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2013年1月25日、たまプラ大学その3「生活者視点のスマートコミュニティって?」が開催されました。講師は、日経BP ecomom(エコマム)プロデューサーの久川桃子さん。今回は、エコやライフスタイルの最前線の情報を発信している久川さんに、生活者視点のスマートコミュニティについてお話を伺いました。

参加者は20代〜70代までバラエティ豊かで、そのうち6割ほどを男性が占めていました。仕事帰りに立ち寄ったと見られるスーツ姿の人も多く、スマートコミュニティに対する関心の高さを伺わせました。

久川さんは、祖母から譲り受けたという着物を着て登場しました。祖母とは体型がまったく違っていたという久川さんは着物を仕立て直して着ています。同じようにまちづくりも、もともとあるものを今に合った形で仕立て直していくものではないかとお話してくださいました。

「ecomom」も注目しているスマートコミュニティとは?

まず参加者に配られたのが、久川さんがプロデューサーを務める雑誌「ecomom」です。ecomomは家族と自然に優しい暮らしを提案する雑誌及びウェブサイトのこと。エコや食、環境に関する情報やライフスタイルの提案など、無料雑誌とは思えないほど充実した内容になっています。ecomomの読者は30代〜40代の小さなお子さんをもつお母さんが中心です。雑誌は通常の書店では販売しておらず、アンケート調査への協力を条件に登録した4万人の読者に無料配布しています。

そのecomomでも注目しているのが、スマートコミュニティ(スマートシティ)です。スマートコミュニティとは「環境負荷を抑えつつも、生活の質を高めながら継続して成長を続けることができる新しいタイプの都市構想」のことです。スマートコミュニティを実現するためには、電力の有効利用や再生可能エネルギーの活用、交通インフラの整備など、社会システムを統合的に管理・最適化する必要があります。

たとえば自分の地域で発電した電気を使い、余ったらお隣の地域に分けるというコミュニティ単位でのエネルギーシェアが始まると、地域の誰かがエネルギーを管理する必要が出てきます。そこでこれらの仕組みを最適化して整えていくのがスマートコミュニティという考え方です。

「次世代郊外まちづくり」は新しいタイプのスマートコミュニティ

じつは横浜市は、経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証地域」に選定され「横浜スマートシティプロジェクト」に取り組んでいます(横浜市のほかに福岡県北九州市、愛知県豊田市、京都府のけいはんな学研都市が実証実験に参加)。そのほかにも、千葉県柏市の柏の葉キャンバスシティプロジェクト、神奈川県藤沢市の藤沢サステイナブル・スマートタウン、埼玉県本庄市の本庄スマートエネルギータウンプロジェクトなど、各地で独自にスマートコミュニティに取り組んでいる地域も増えてきました。

その中でもまったく新しいタイプのスマートコミュニティだと感じているのが、たまプラーザの「次世代郊外まちづくり」だそうです。これまで、独自にスマートコミュニティに取り組んでいる地域には、新興住宅地などの新しい町が多いそうで、生まれてから50年経った町をどのようにスマート化していくかを検討しているという点で、久川さんも「次世代郊外まちづくり」に注目しています。

スマートコミュニティ実現の課題

現在のスマートコミュニティへの取り組みは行政や企業が主体として関わっているため、どうしても産業振興の要素が強くなり「最近メディアで名前を聞くけど何なのかよくわからない」というような、生活者にとっては縁遠いものになりがちです。ここで問題となってくるのは、実際にスマートコミュニティで暮らす生活者との距離をどう近づけていくかということになります。

「生活者視点でスマートコミュニティを考えると”こんなこともできます、あんなこともできます”ということより”こうなったらハッピー”と思えるような、地域ごとのニーズを掘り起こしていくことが大切なんですね」と久川さん。

ecomomでは、2012年秋にスマートコミュニティを自分ごととして捉えてもらうために「防災から考える家族のスマートライフ」というテーマを設け、生活者のスマート化への意識はどうなっているかの調査と検討会をネット上で行ないました。その中でスマートの次はどんなキーワードがくるかを尋ねたところ、「シンプル&スロー」、「環」、「サステナブル」、「ゆとり」、「思いやり」、「共有」、「配分」、「スモール」といった、物質的な豊かさより精神的な豊かさを重視する傾向がありました。これが行政や企業だけで取り組んでいては見えてこない、生活者のニーズです。これらも踏まえた上で、生活者と行政と企業が一体で地域を作っていくことが、スマートコミュニティの実現には重要です。

最後に、国土交通省が横浜市の東急田園都市線沿線で実施する超小型モビリティのモニターイベント実施の案内と質疑応答があり、意見や質問が飛び交いました。

「私がecomomをやり始めて丸5年が経ちました。ecomom自体は始まって丸8年です。始めた当初はエコを発信するだけで目新しかったんですが、今は環境のことについて考えるのは当たり前のことになってきました。震災を機に、すべてを所有しなくちゃいけないという考え方から、シェアすることで他者と繋がりたいという精神的な豊かさを重視する生活者のニーズが見えてきています。このように”どんな暮らしが豊かなのか”生活者の視点から考える、これが将来のスマートコミュニティの成功に繋がっていくと思います」

各地でスタートしているスマートコミュニティのプロジェクト。「次世代郊外まちづくり」でも、インフラを含めた未来像を検討することは、より良い地域の未来のためにも必要不可欠なのではないでしょうか。エネルギーを地域で賄い、環境負荷の少ない車が走り、公共交通も充実している、そんなスマートコミュニティでの新しい暮らしは、実用的にも精神的にも豊かさを育んでくれそうです。
 

参加者の感想

S.Mさん(40代・女性/美しが丘2丁目在住)
私スマートコミュニティを形成するにはどういったことから始めていけばいいのかを知りたくて参加しました。今日は具体的な話までは聞けなかったのが残念でしたが、超小型モビリティのことなども知ることができたので良かったです。ぜひ今後、行政がこれらの普及も後押ししてほしいと思います。

C.Mさん(60代・女性/美しが丘1丁目在住)
35年前にドイツのケルンに住んでいたことがあり、ドイツ市民の環境に対する意識の高さ、発想の転換の早さに大変共感しました。環境は財産ですから、私も精神的に自堕落になって財産を失わないようにと思い、参加しました。まずはインフラの見直しをしていかないといけないと思いました。駅前の商店街を歩行者しか入れないようにするとか、今日紹介されたような小型モビリティだけが入れるようにするとか、環境を大切にしたコミュニティの作り方を考えていきたいです。

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