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イベントレポート

2013.04.22(月)

次世代郊外まちづくり「たまプラ大学」その7「住民主体のまち育て 〜日本型HOA(住宅所有者の組合)のすすめ〜」

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2月26日、たまぷら大学その7「住民主体のまち育て〜日本型HOA(住宅所有者の組合)のすすめ〜」が開催されました。講師は明海大学不動産学部教授、日本型HOA推進協議会代表の齊藤広子先生です。今回は「3.11の東日本大震災、そしてのぞみ野を経験して、エリアマネジメントを改めて考える」をテーマにお話してくださいました。

HOAは「homeowners association」の略で、自分のまちの「魅力」を所有・管理する住宅所有者の組合のことです。アメリカでは8分の1の人がHOA制度のある住宅に住んでいると言われています。日本では、分譲マンションには共用部分を管理する管理組合がありますが、郊外住宅地には共用部分や共有といった考え方があまりなじまないため、HOA制度のような取組みはまだまだ先進事例です。日本型HOAは、アメリカで普及しているHOAをそのまま当てはめるのではなく、日本に合ったものに変えながら実践しようとしているものです。

東日本大震災を経験し、改めてHOAの大切さを実感

お話は、日本の事例をいくつか紹介しながら進められました。齊藤先生は以前に、中部圏の田園調布と言われる岐阜県可児市の桜ヶ丘ハイツを視察し、その美しい街並みに感動しました。

まちには電柱や電線がなく、歩道は芝生で、公園もきちんと整備されていました。桜ヶ丘ハイツでは、まちの景観を守るために住民が行政と管理協定を結んで歩道や公園の管理を行なっています。また、まちに関心をもってもらうため、アンケートをとって広報したり、ワークショップ形式で公園作りをしたり、ボランティアによる高齢者の移動支援や住民が利用できるお休み処「みんなの家」の運営なども行なっているそうです。これは、行政や企業に頼らず、住民が主体的にまちづくりに参画し、実現したものです。

さらに、まちのマネジメント力=HOAの大切さを改めて痛感したのが東日本大震災でした。千葉県に住む齊藤先生は、液状化現象によって何週間もの間、水・ガスといったインフラが止まる経験をしました。1日3回、全住戸に水情報が配布され、ひどい時は3時間も給水車の列に並ぶこともありました。

すると、住宅地や各マンションによって、いろいろな対応が見られたそうです。日頃から積極的に活動していた自治会や、しっかりした管理組合のあるマンションでは、助け合いが自然と行なわれていました。率先して助ける側に回る人には、日常的にイベントに参加している人が多いという傾向も見受けられました。中には、医療チーム、買い出しチーム、保険チーム、停電チームなど、必要に応じてチームを作ったマンションなどもあったそうです。このように、住民が意識を高くもつことや、住民間のコミュニケーションを活発に行うことで、まち全体のマネジメント力もアップするのです。

日本型HOAの事例「リビオ姫路大津ブルームガーデンのぞみ野」

HOAを推進するにあたっては「住民の組織があり、自分たちの活動の拠点や場をもち、専門家の支援がある」ことが大切だと齊藤先生。

現在、齊藤先生がマネジメントプロデューサーを務め、日本型HOAを実践しているのが兵庫県姫路市の分譲地「リビオ姫路大津ブルームガーデンのぞみ野」(全293区画)です。

のぞみ野では当初の分譲の際に自治会とは別に管理組合(HOA)を作り、月に1度会合を開いて、街の景観や環境、地域活動について住民が話し合いを重ねています。ポイントは、会合のあとは必ずそのまま飲み会をやることだそうです。会合だけだと堅苦しい印象ですが、飲み会という楽しみを作ることによって参加率が上がり、住民同士がコミュニケーションをとるきっかけが生まれます。実際に参加率も高く、みなさんとても仲が良いそうです。

「参加者を増やすためには、明確なメリットを提示し、「楽しみ」をつくることも大切なことです」

そのほか、HOAを機能させる仕組みとして、敷地内にコミュニティハウスを作りました。これはご近所さんとのちょっとしたお茶飲みから教室、イベント開催まで、住民が自由に利用することができる共有スペースです。集いやすい場があることで交流が生まれ、自然と地域活動も活性化します。

また、コミュニティハウスには快適で安心なまちづくりをサポートするコミュニティマネージャーが常駐しています。敷地内の巡回や清掃のほか、イベントを開催する際は相談に乗ったり、協力もしてくれるのだそう。暮らしの中で安心して相談できる相手がいるというのは、意外と心強いもの。これらを活かしたコミュニティ作りが、のぞみ野における日本型HOAの取り組みです。

すでに存在するまちではどうすればいい?

のぞみ野の事例は、日本型HOAに一定の関心や共感を持っている人が入居する、新しい分譲地だったからできたことでもあります。そこでたまプラーザのように「すでに存在するまちではどうすればいいのか?」という事例もお話してくださいました。

イギリスのレッチワースというまちは1905年に開発が始まり、現在は約3.5万人が居住している田園都市です。ロンドンからはやや距離があって通勤には不便な立地なのですが、今でも人気が高い住宅地となっています。

レッチワースの特徴は、開発を手がけた不動産会社がそのまま管理運営業務にも携わっていることです。こうして建物の管理をしっかりと行ない、街の景観を守ることで、資産価値の維持向上に成功しています。まちに入る商業施設から借地料収入を得るなど、業務継続のための収入源も確保。適切な維持管理がされているからこそ、100年以上が経っても美しい街並みが保全され、住みたいまちとして人気があるのです。

また、そのように資産価値の高いまちでは、住民もまちへの誇りをもっています。まちに誇りをもっていれば、そのまちを守り、より良くしていくために住民も行動を起こします。景観が荒れたり、治安が悪くなったりということも、起こりません。

「まちづくりの主体は住民であり、まちの価値を上げていくのは住民だということを忘れないでください」と齊藤先生。

HOAはまちに誇りをもつことと、活動に楽しみを見出すためのツールです。自治会や組合、自主活動、つい面倒に感じてしまいがちなこれらの活動も、まちに誇りをもっていれば当然必要なこととなり、楽しみながら取り組んでいくことができます。

誰もが住みたいと感じる街並みを残すには、まず自分自身の意識改革がとても大切になってきます。斉藤先生のお話は、既存のまちで住民の皆さまと一緒に、郊外住宅地の持続と再生を目指していく 「次世代郊外まちづくり」のコンセプト、「発想の転換と市民の行動で郊外は魅力的に生まれ変わる」とも通じるところのあるお話でした。

参加者の感想

D.Uさん(60代・男性)
我々はすぐ自治体にお願いしようとか補助金を出してもらおうと考えますが、自分たちでやるべきことはやっていかないと自治体もそれを応援してくれないんだなということを感じました。自治体は地域全部を見ているわけで、いざ災害が起こった時、自分たちのまちに回ってくるのはいつかわかりません。今まで役割分担を決めつけていましたが、発想の転換をして、非常時も含めて住民が自主的に動ける態勢を作る必要があると、先生の話を聞いて改めて強く思いました。今、自治会の立ち上げを考えていて、先生から的確なアドバイスもいただけました。有意義な時間をありがとうございました。

S.Eさん(40代・女性)
まちの価値をどう守っていくかということで、HOAがどんなものか気になり、参加しました。活用していきたいと思ったのは、イベントなどで住民同士が知り合う場を仕掛けとして作り、コミュニティの形成に活用していくという点です。私はたまプラーザに住んで4年目になりますが、そういった取り組みは今まで特にありませんでした。そのためにも、コミュニティマネージャーのような人に入ってもらうことは大切だと思いました。今後自分がどう取り組めるのかはまだわかりませんが、ちゃんと考えていきたいなと思います。

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