イベントレポート
2013.02.01(金)
第3回 次世代郊外まちづくりワークショップ まちが魅力的になるアイディアを出そう
2012年12月8日、第3回目の次世代郊外まちづくりワークショップ「まちが魅力的になるアイディアを出そう」が行われました。初めて参加する人も多く、今回が最多の出席者となりました。第2回目の参加者は前回と同じグループに入り、すっかりうちとけた和やかな雰囲気で会は始まりました。
前回までのワークショップ
まずは、石塚計画デザイン事務所の石塚所長が、前回までの振り返りを行いました。第2回目のワークショップ「将来の課題を把握して未来の物語を描こう」では、12のグループで未来のたまプラーザがこうなったらいいなと思う物語を作成。移動式マルシェや、公園や緑化スペースでひらかれるパーティーで住民がつながっていく様子や、空き店舗を改装したBARを開く夢のリタイアライフ、コミュニティ単位の介護サービス、団地再生をきっかけに住民が地域活動に積極的に関わっていく物語、など夢あふれつつも、どこか近い将来実現しそうな、未来の物語を「みらいを語る12の物語」という冊子にまとめてワークショップ参加者に配られました。これにはご参加の地域の皆さまも思わずニンマリ。
これを受けて、今回行ったのは「まちが魅力的になるアイディアを出そう」というもの。未来の物語を実現するために、より具体的な施策を考えます。12のグループが「豊かさ」「暮らし」「住まい」「仕組み」「土台」の5つのテーマに分けられ、さっそくグループワークに入ります。
まちづくりの入口をつくる
私たち取材班が参加させてもらったのは、前回、多世代交流の場づくりと、そこでの出会いがきっかけで結婚までしてしまう60代シングル女性の物語をつくった女性の多いグループ6でした。
まずは、具体的なテーマを選びます。多世代交流といえば、まず考えられるのは子どもとお年寄り。「PTAと商店街にはつながりがあるのか?」という疑問を皮切りに、話が展開していきました。安全な通学路確保のためにPTAと商店街が協力した実績や、子どもを預かるNPOが商店街と一緒にイベントをやっていることなどに話が及びます。また高齢者についても、以前大学生がお年寄りの家を周るプロジェクトを自主的に行っていたことが共有され、その人が卒業すると活動が途絶えたことがわかりました。次の世代につなげていくには、大学そのものと組むなど、組織との連携が必要かもしれないという話に発展していきます。
一方で、こんな意見も出てきます。「企業や、商店街、組合など団体と何かを一緒にやろうとすると、相手は団体の代表として話すので、なかなか物事が決まらないことも多い」というのです。商店街の方もこう話しされました。「このワークショップの時間帯に商店街の人の大半が参加できないのは、皆今働いているからなのです。だから何か一緒にやろうと言っても、忙しくてなかなか実現するのは難しいのではないか。」
それを解決する案として出てきたのが、団体というよりも、そうした町の人ひとりひとりが「個人的につながっていける場をつくる」ことの方が大事ではないか、ということでした。そこで導かれたテーマは、「まちづくりの入口をつくる」。テーマが決まると、そのために使えるスペースはどこか、人が集まるためにどんなイベントを行ったらいいか、などのアイディアが次々に出てきます。
気軽に集まれる場づくりとまち歩きのルートマップづくり
そんな風に話が進むうちに、もうひとつ出てきたのが塔Rミュニティハウス狽ニいうキーワードです。町の人たちが、用がなくても立ち寄れる場所として、空き家などを利用してつくるのはどうか、というものです。これには多くの方から「いいね!」の声があがります。九州地域では、酒屋の一角でお酒を立ち飲みする「かくうち」という習慣があることや、スペインのバルなど、ちょっと気軽に立ち寄れてコミュニケーションをとれる場が欲しいね、との声の意見も出ました。
ただ、そうした場所があるだけでは入りづらく、いつも同じ顔ぶれになる懸念もあります。そこで、コミュニティスペースをつなぐルートマップをつくってはどうか、というアイディアが出されました。つまり、コミュニティハウスやバーなど、人が集まることができる場をつくるだけでなく、その場をつなぐ地図を用意して、町歩きのイベントまで行ってしまおうというもの。高齢者でも周りやすいように、バリアフリールートや、坂道を利用した体力増進ルートなどがあってもいいのでは、と話は広がります。このルートマップの案は、一つ目のテーマ「まちづくりの入口をつくる」も集約する、素敵なアイディアとなりました。
発表とまとめ
こうして予定されていた2時間はあっという間に過ぎ、グループワークは終了。最後に6つのグループが発表をしました。ここでは、1グループと5グループの内容を紹介します。
1グループで発表されたテーマは「地域のグランドデザインにつながる団地再生の方向性」です。緑の多く住民の交流も盛んな団地をつくりたいという将来像に向けて、出されたのは次のようなアイディア。「現在の歩行者専用道路を中心に緑の道をつくり、カフェやお店、交流スペースなででにぎわいを創り出していく。子育てカフェにも、お年寄りが集まるサロンにも、中高生が集まる場など地域の拠点になる。緑の道の周囲には多様な住宅を配置。セルフビルドやシェアハウスなど、さまざまな世代がライフスタイルに合わせて住まえるような住宅を目指す。若者にも魅力をもってもらえるよう、若手の建築デザイナーに設計してもらい、デザインのショーケースとする」などから、「緑豊かな若者の多い団地の再生」を目指そうというものでした。
それ以外にも、以下のようなタイトルのテーマが挙げられ、それぞれ具体案が出されました。
1グループ
テーマ1:地域のグランドデザインにつながる団地再生の方向性
テーマ2:の魅力を維持しながら、戸建住宅に若い世帯を呼び込むには?
2グループ
テーマ1:若年家族の住まいについて
テーマ2:団地再生について考える
3グループ
テーマ1:多様なライフスタイルに合わせた住まいづくりと住み替えの仕組みづくり
テーマ2:空き家、空地の活用や維持管理をどのように進めるのか
4グループ
テーマ1:たまプラーザ団地に新しい価値を提案しようプロジェクト
5グループ
テーマ1:日常生活を支えるサービスネットワークの構築
テーマ2:地域の足となる交通の再構築
6グループ
テーマ1:「まちづくりへの入口をつくる」〜コミュニティスペース候補発掘型モデルルートマップづくり編〜
テーマ2:「まちづくりへの入口をつくる」〜多世代参加型・コミュニティスペース育成型の実験イベントの企画・実施 編〜
7グループ
テーマ1:多様な子育て環境づくり「まちぐるみで子どもを育てる」
8グループ
テーマ1:たまliva 〜たまプラーザに住まう人々がふらっとたまれる場〜
テーマ2:美マルシェ計画
9グループ
テーマ1:地域通貨のしくみを取り入れて、子育て世代のお母さんや経験豊富なお年寄りの社会参画をすすめる。
テーマ2:子どもも含め、多世代が気軽に集まれる交流スペースの運営
10グループ
テーマ1:地域コミュニティの再生+地域で働く環境づくり
11グループ
テーマ1:地域コミュニティの再生
テーマ2:郊外住宅地の新たなブランドづくり
12グループ
テーマ1:アイディア実現ロードマップ〜まちの資源を有機的につないでいこう!
テーマ2:地域コミュニティによる防災
まちづくりと一言でいっても、稀有壮大なプランではなく、ひとつひとつが身近で「すぐにも実現できそうなアイディアが沢山ある」という小泉秀樹准教授の話を受けて、会は終わりを迎えました。
参加者の感想
S.Nさん(40代・女性)
私のグループでは、プロジェクトを立ち上げたらいいのでは、という話をしていたのですが、今回の参加者には、皆地域のなかですでに活動をされていたり、NPOの方だったり力をもっていらっしゃる方々が多いので、すぐにでも実現できるのではないかという印象を持ちました。
Y.Kさん(30代・男性)
今日は知人に声かけていただいて参加しました。これまで住む場所をいくつか点々としてきたのですが、この地域ほど熱心で団結した雰囲気は他ではなかったと思います。皆さん頑張ってらっしゃるのがスゴイなと思いました。もともとまちづくりや建築などに興味があるので今後も参加したいです。