イベントレポート
2013.03.21(木)
第4回次世代郊外まちづくりワークショップ「アイディアから重要なテーマを絞り込もう」
冬の寒さも中盤を迎える2月2日、第4回「次世代郊外まちづくりワークショップ」が行われました。これまで3回のワークショップを通して、“未来のたまプラーザをこんな町にしたい”というビジョンを参加者皆で描き、数多くのアイディアが挙げられました。そのなかで見えてきた理想像を具体的に形にするための策が、今回から話し合われます。近隣地域から参加されている皆さんと横浜市や東急電鉄のメンバーもすっかり顔馴染みになり、何かが実現していくという雰囲気になっているのが印象的です。当日はNHKの取材カメラも入りましたが、直ぐに皆さんがカメラが回っていることも忘れる位、白熱した議論が展開されました。
リーディング・プロジェクトを考えよう
まず、前回までのワークショップについて、石塚計画デザイン事務所の石塚所長より、改めて紹介がありました。第3回のワークショップでは、「豊かさ」「暮らし」「住まい」「土台」[仕組]と大きく5つのテーマごとに「まちが魅力的になるアイディア」が数多く挙げられました。また、具体的な実現に向けて、どのように計画していくのか。そして、どのアイディアを優先的に進めるのか。今回リーディング・プロジェクトを皆で決めることになります。これまでのワークショップの意見を元に整理された2つのコンセプトは「今あるものを活かす ~充実した人的・空間的資源の活用や、次世代に必要な新たな機能の再構築~」と、「これまでの仕組みや既成概念にとらわれない新たな枠組みづくり」です。
このコンセプトを背景に①空き家、②空き地、③団地・社宅等の空き室、④駅、⑤空き店舗、⑥公園、⑦道路・遊歩道、⑧集会所、⑨学校といった具体的な場所で、人の交流やネットワークづくり、情報、アイデアのマッチングを考えていく9つの個別プロジェクトと、まちの再生の仕組みを考えていく⑩戸建て住宅地の更新、⑪団地・社宅の再生、⑫住民主体のまちづくり、の合計12のテーマを設定しました。この12のテーマ別グループごとに、今回と次回の2回にわたってディスカッションを行います。
団地の空き室を何に使うか?
取材班が参加させてもらったのは、たまプラーザならではのインフラであり、数も多い「団地・社宅等の空き室」のグループです。参加者には、建築や医療・介護関係のお仕事の方が多く、皆さんこの地域の空き室の活用に関心の高いことがうかがえます。まずファシリテーターが投げかけたのは、ずばり「団地・社宅の空き室を使って何をやったらよいか?」というテーマ。
まず、グループホームと児童保育を融合したような施設をつくったらどうか、というアイディアが出ました。老人同士の交流と子ども保育をつなぐ場として空き室を使う、というもの。おばあちゃんの知恵を子どもに伝える場としてもいいよね、という話に広がります。また、病院に行って検査をするほどではないけれど、日頃の健康チェックができる拠点が欲しいという声も。血圧を計ったり、お医者さんでなくても、看護師に身体のことを相談できる場所。それほど大きなスペースでなくても実現できそうです。
こうした流れで出たさまざまなアイディアは、大きく二つに分けることができました。ひとつは、グループホームに関連して、介護と医療と看護ができる地域包括ケアシステムです。365日24時間対応できて、在宅で看取りまでできる在宅医療の拠点として、空き室を活用し、学校区ほどの範囲をカバーするというもの。
そしてもう一つは、マンションの空き室を団地や社宅に住んでいる人たちが便利になるような用途に役立てるというもので、ちょっとしたミニ店舗や施設にできたら、という案です。コンビニ、薬局、図書館、介護、交番などの生活に必要な機能や、屋上菜園、DIYの実験場、マンションの通路側をショーケース化するなどユニークな案も出されました。
そしてもう一つは、マンションの空き室を団地や社宅に住んでいる人たちが便利になるような用途に役立てるというもので、ちょっとしたミニ店舗や施設にできたら、という案です。コンビニ、薬局、図書館、介護、交番などの生活に必要な機能や、屋上菜園、DIYの実験場、マンションの通路側をショーケース化するなどユニークな案も出されました。
団地にまちの機能をもたせる「いろとりどりプロジェクト」
住民の4割以上が65歳になると予測されているまちの将来を考えると、健常者のための介護施設が必要という話は説得力がありました。ところが突き詰めていくと、在宅医療についての話が少し専門的になっていきます。介護するのに家族の負担をどう減らすのか?協力してくれる医療機関が必要だがどうやってそれを手配するのか。ビジネスとして移動に一時間かかると、成り立たない。担い手は?などなど。専門的になりすぎて議論が行き詰まります。一方で、昨年11月に「次世代郊外まちづくり」の地域包括ケアシステム推進部会が設置され、既に動き始めていることなどもわかり、この場で具体的な事業プランをたてるのは現実味がないのではという話に。
改めて議論は原点に立ち返ります。「どういう機能が社宅や団地の空き室にあったらいいのか?」医療ももちろん大事だけれど、一つの機能が充実しただけではまちは変わらない。それ以外にも様々な用途で使えるスペースがあるといいよね、という話が再び浮上。例えば、アパートの一室がコンビニの支店のようになっていたり、ちょっとしたテーマ型図書館があったり。そこで生まれたのが“団地のなかにまちをつくる”というコンセプトです。
この方向性が見えると、議論は一気に加速しました。在宅拠点も含めて、さまざまな機能をもつ部屋があれば便利だしコミュニティの生まれるきっかけにもなりそうです。スペースを貸して、自由に使ってもらえる場があってもいいかもしれない。その管理をするために、まち(空き室)をコーディネートし、ディレクションする人が必要。どこの部屋にどんな機能があるのか、一目でわかる地図がほしいよね。分野ごとに色分けされたサインをつくろう、などなど。マンションの壁面に、色とりどりのサインがかかっているイメージがメンバーの頭に湧いてきます。最終的にできたプランは、まちの機能を団地のなかに埋め込む「団地いろとりどりプロジェクト」でした。
次に考えるのは仕組みづくり
この辺りで、約2時間にわたるグループディスカッションはそろそろ終了の時間に。続きは第5回に持ち越されることになり、この日は全チームが途中経過を簡単に報告するところまでとなりました。報告のなかで目立ったのは、コミュニティセンターなど交流の場をつくる内容が多かったことと、その管理や維持のための仕組みづくりに話が及んだことです。各チームの発表を受けて、東京大学大学院小泉秀樹准教授が次のように総括されました。
「今日出た案はどれも閉じられたコミュニティではできないことばかりです。多くの人と物事を進めていくには、それをマネージメントする組織や、人と人をどうマッチングするかという仕組みが共通の話題として出てきていました。今後それを整理して、企業や市などの行政にお願いすべきこと、家をお持ちの方にうまく働きかけて協力をお願いすること、など誰にどう働きかければよいのか、プレイヤーを具体的に見据えながら話が進められたらと思います。」
次回、より具体的なプロジェクトの実現に向けて考えるべきことを示唆して、会は終わりを迎えました。
参加者の感想
M.Tさん(40代・男性)
そもそも、これだけ沢山まちのことを考えている人がいる、ということが驚きでした。しかも皆さんプロフェッショナルな方も多く、話のレベルが高いです。企業からみると、住民の声や意見を聞くことができる貴重ないい機会なのではないかと思います。
A.Kさん(40代・女性)建築に携わっている者ですが、建物や家をつくることは、まちをつくることと切り離せません。現場でも、ハードをつくるだけじゃなく、ソフトの面も合わせて提案する機会が増えています。ソフト面の話になると、住んでいる人の声が一番大切なので、今日皆さんから色々聞いたことは、仕事に役立ちそうです。でも今日は具体的に空き家のオーナーがここにいらっしゃったわけではないので、これからどういう仕組みづくりがされていくのか、に興味があります。