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イベントレポート

2013.04.30(火)

第5回次世代郊外まちづくりワークショップ「市民、企業、行政のコラボレーションを具体的に考えよう」

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例年より暖かい日が続き、春の兆しが見え始めた3月9日、昨年10月にスタートした「次世代郊外まちづくりワークショップ」の第5回が行われました。今回は地域住民の皆さまと一緒に次世代郊外まちづくり構想案を策定していくワークショップの最終回です。第4回ワークショップに続き「リーディング・プロジェクト」を考えていきます。具体的に進めたいプロジェクトに関してさらに議論を発展させ、各グループで発表を行います。

オープンワークショップの説明と前回の振り返り

まず冒頭では、1月18日、19日の2日間、たまプラーザ テラスで行われたオープンワークショップの報告と、ウィッシュツリーやアンケートを通して集まった意見の紹介がありました。新たに寄せられた声も今後のプランづくりにも反映されていきます。
意見紹介後は、ワークショップの開始です。第4回では、テーマや場所は違えども「地域の課題解決」と「住民同士の交流の場をつくる」両方の要素を兼ね備えたプランが多く見られました。今回は、前回と同じグループ、同じテーマを掘り下げ、「ヒト、モノ、金、制度」について具体的にアイディアを出していき、実践を視野に入れたリーディング・プロジェクトのアイディアを完成させていきます。前回と同様、12のグループで話し合いが始まりました。

コミュニティ・ビジネスの前提

今回取材班が参加させてもらったのは、特定の場所に限らず、「住民主体のまちづくり」を持続させていく仕組みを考える12グループです。そのために必要なヒト、モノ、金、制度について考えます。前回このチームでは、コミュニティカフェの設立と、コミュニティ・ビジネスの創出を具体的に考えていました。

まずは「ソーシャルビジネス」そのものの定義から話が始まります。活動を続けていくには「ソーシャル」を取って「ビジネス」として考える方がよいのではといった意見や、儲けることが第一義ではなく町をよくすることが目的なので持続できればよいという意見などがでました。「きちんとした計画にもとづくビジネスを行い、その結果まちが良くなればいい」という声には多くの人が賛成しました。

1Fには誰でも気軽に立ち寄れるカフェ、2Fに本格的にビジネスを起こしたい人が集まるオフィスといった2階建ての構造が提案されます。1Fと2Fに集まる人の層の違いやニーズを把握しなければそもそも人が来ない、といった問題点も挙がりました。

具体的なビジネスアイディア

次に、具体的なビジネスアイディアを考えます。品川区の中延商店街で行われている「街のコンシェルジュ」の事例が紹介されました。このサービスでは、商店街の商圏に歩いて通えるお年寄りをコンシェルジュとして、電球を変えられないようなお年寄りの元に派遣しています。依頼する内容によって値段は変わりますが、基本は商店街のクーポンを800円で販売し、そのうち500円が商店街に入り、300円が運営団体に入るモデルです。

この形はたまプラーザでも応用できそう、という話に。電球を変えるだけでなく、特定の人にしかできない技能を、サロンを開いて教えることも考えられます。マンションの大規模改修の経験を、別のマンションの方に共有してコンサルを行うサービスや、不動産のアセットマネジメントの話も出ました。この他、地域通貨を使って、買い物分の数パーセントを商店街に還元するビジネスモデルや、節電で削減できた電気代分をエコポイントとして活用できる案など話は広がります。

ヒト、モノ、金、制度の視点で考える

ビジネスアイディアがいくつか出たところで、それを実現するには、ヒトやモノの面でどんなものが必要か?に話が及びます。カフェの運営はひとりでは無理なので複数人で持続できる体制が必要なことや、サポートする人員として“若い高齢者”や大学生が考えられることなどが挙げられました。

理想的な場所としては、会社帰りにも通いやすい駅近の場所、キッチンがあるところ、などの条件があがりますが、まずはテスト運用する場として「美しが丘ボランティアセンター」が16時で閉まるため、活用できるかもしれない、との意見が出ました。

ビジネスの生まれる場としては、韓国のスマートワークセンター(起業支援型のシェアオフィス)や柏のフューチャーセンターを参考にするとよいのでは、という話が出ました。いずれにしても、カフェを利用するのがどういった層か、本格的にビジネスを始める人にとってどんなスペースが有効なのかを調べることが必要という結論に至りました。こうした課題を引き続き、テスト運営のなかで詰めていくことを前提に、話はまとまりました。

発表
最後に、各グループの発表が行われました。ここではそれぞれの要点のみをご紹介します。


1グループ <戸建住宅地の更新>
住む人、住みたい人を増やす ~子ども世代を呼び戻そう!子育てしたい戸建住宅地へ~
子ども世代、孫世代が愛着を持つまちへ、そのためには、「住む+αの機能」の導入や、日本型HOA(homeowners association)のような“戸建て住宅地の修繕計画組織をつくろう!”。マンション同様に戸建て住宅にも、インフラの老朽化対策など管理していく組合をつくるアイディア。そのために管理会社やアセス委員会をメンバーとした仕組みづくりを行う。


2グループ <空き地>
向こう三軒両隣 ~つくって食べて、食を通じたコミュニティ再生~
空き地に菜園をつくって菜園クラブをつくる。協力者は専門家である農家や企業を想定し、マルシェやABCクッキングとも連携。参加費やバザー、Tシャツの販売などで活動資金を生み出していく。


3グループ <団地・社宅の再生>
団地の緑などの資源を活かし、住む場所だけではない暮らしの機能も持つ地域の庭・公園のような場に。
コミュニティカフェ、高齢者向けサービス、子育て支援や魅力的な遊び場、アート、農園などの暮らしの機能を導入しつつ、若い世代にも魅力的な賃貸住宅、シェアハウスなど多様な住いを提供していく。
団地の各戸のオーナーを取りまとめていくための「マスタープランをつくる」ことが不可欠。


4グループ <集会所>
美しが丘交差点 ~いつでもここにある、いつでもいける交流の場~
美しが丘交差点付近に、住民の能力や得意技を生かし、多世代の利用者が気楽に集まれるクオリティの高いコミュニティカフェをつくる。「AOBA+ART」と組み、店内のデザインを工夫しアートをテーマにした店に。運営NPOをつくって人材を募集していく。


5グループ <空き家>
空き家を上手に使おう
空き家の所有者にとっては、固定資産税やリフォームの面で貸してメリットがあることが重要。所有者のメリットを出しつつ、きちんとした借り手を紹介できるコーディネート組織をつくる。周囲の住民の交流の場になる地産地消のコミュニティカフェ。まずはガレージから活用など段階的に進める。


6グループ <団地・社宅等の空き室>
団地の中にまちをつくろう ~いろとりどりプロジェクト~
団地や社宅の空き室に、健康づくり、学びの場、コミュニティ・ビジネスなど、いろいろな機能を埋め込み、団地や周囲の住宅地の住み心地の良さを向上させていく。
団地や社宅に空き家が目立つようになってきた。一人でも多くの人に住んでもらうことが重要。所有者の意向の確認や、住民の要望とをつないでいくコミュニティマネージャーのような立場の人をつくっていく。


7グループ <道路・遊歩道>
美マルシェ・美カフェプロジェクト
高齢者や子どもたちの見守りも行う地域交流の場づくりや、地域住民の発表の場づくりで、まちの賑わいと魅力をアップ。たまプラーザ商店街に美マルシェ、たまプラ団地に美カフェをつくる。マルシェではプロに入ってもらい利益のあがるモデルを追求し、カフェを学生や利用者が手づくりするコミュニティスペースとする。


8グループ <駅>
たまプラ広場
今年3月に駅近接にできた地域ケアプラザを、多世代交流の場として活用する。保育や子育て支援を核に、自己実現とワークライフバランスをかなえるコミュニティ拠点をつくる。お年寄りやママだけでなくパパも立ち寄れるカフェや、たまプラの住人に講師になる「たまプラ大学」など。


9グループ <公園>
「美丘コミュニティ広場」をつくろう
大小合わせて9つ公園を活用して、多世代が緑を通じて豊かに過ごし、集える場としてコミュニティ広場をつくる。公園をコミュニティの場として活用するために、従来の規制やルールを変える必要がある。運営団体を立ち上げてイベント運営も行っていく。


10グループ <学校>
地域に開かれた学校をつくろう
現在ある2つの小学校と中学校を、地域住民も集まり交流し学ぶ、多面的な顔をもつ学校にしていく。学校地域コーディネーターを増やしたり、各校の学校運営協議会の統合した運営を行っていく。3校と地域が連携し、学校の先生を助け協力体制をつくる「美しが丘ダイヤモンズ」を結成。


11グループ <空き店舗>
たまぷらっとプラ~ザ
空き店舗をリノベーションして地域住民が講師になった教室を開催したり、コミュニティカフェを運営して交流とスキル発揮のシェアの場に。たまプラーザには商店街の空き店舗があまりないため、店のアイドルタイムや定休日のタイムシェアや、店舗内の様々なスペースの活用を提案していく。


12グループ <住民主体のまちづくり>
住民の交流や活動できる「場」と仕組みをつくっていく
~コミュニテイ・ビジネスや地域で働く場をつくるには?~
色々な人が働ける場をつくることがテーマ。多くの人が気軽に集まれて、専門家が起業支援をしてくれる2階建て構想のカフェをつくる。運営組織を立上げ、人材を発掘してマッチングさせていく。美しが丘ボランティアセンターで試験的に始めていくことから着手。


最後に「次世代郊外まちづくりワークショップ」を監修してくださった東京大学大学院小泉准教授が、各グループの発表を受けて全5回のワークショップのまとめの総括をされました。「これだけ参加者の世代や性別の偏りがなく、また多くの方が毎回参加するまちづくりワークショップ、はあまり経験がありません。参加者の前向きで熱気あふれる議論や楽しい雰囲気も、たまプラーザならではですね。」とまずは参加者にお褒めのことば。今回、12のグループの発表が会場に並び、地域住民や運営側の関係者の100名を超える参加者が各グループの発表を聞く風景はなかなか壮観だったかもしれません。

「個々のプロジェクトはもっと方向性が拡散すると思っていたが、地域再生のツボを押さえた案が多くて驚きました」との感想と、「これから実現に向けて、個々のプロジェクトがつながっていくことがポイントです。」という小泉准教授のコメントをいただいて会は終わりを迎えました。

具体的にどんな「場」をつくれるか、という宿題をいただいたと小泉准教授が話したように、地域住民の皆さまが5回のワークショップで議論した、自分たちのまちの未来を描くプロジェクトは、6月に横浜市と東急電鉄で発表予定の「次世代郊外まちづくり構想」の中で実現への道筋が示される予定です。そこでは、プロジェクトの担い手、そして「次世代郊外まちづくり」の主役としての住民の皆さまの参画と行動を呼びかけていきます。自分たちのまちを創っていくのは自分たち自身。発想の転換と市民の行動で郊外は魅力的に生まれ変わっていきます。

 

参加者の感想

Y.Kさん(60代・女性)
青葉区でまちづくりや区民会議に参加するなど、市民参画の行政に対して関心があります。この会も、東急と横浜市の新しい取り組みということで、市民参画の様子を見に来ました。これからこのプランがどう本当に実現していくかをウォッチしていきたいと思っています。うまくいけば、住民自治のきっかけになると、可能性を感じています。

F.Sさん(20代・男性)
大学生の自分からすると、ビジネスの話などが多く、レベルが高くて口を出す隙がありませんでした。聞く側に徹しましたが、すごく刺激になったので、ほかの学生たちも参加できたらいいと思います。インターンなど行くよりも面白いし、自分に関わる場所のことなので、より興味をもてるはず。家族同士で参加しても面白いのかもしれません。

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