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イベントレポート

2012.09.03(月)

次世代郊外まちづくりキックオフフォーラム Re郊外 : 発想の転換と市民の行動で郊外は魅力的に生まれ変わる!

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2012年7月14日、神奈川県横浜市青葉区の東急田園都市線たまプラーザ駅隣接のたまプラーザテラス内プラーザホールにて「次世代郊外まちづくり」キックオフフォーラムが開催されました。近隣在住・在勤の方々を中心に200人以上の方の参加をうけ満席となった会場では、市民・事業者・行政の垣根を越えた熱い議論が展開されました。
 

  • 主  催:横浜市・東京急行電鉄株式会社
  • 後  援:東京大学 高齢社会総合研究機構
  • 開催日時:2012年7月14日(土) 13:00~16:30
  • 開催場所:たまプラーザテラス プラーザホール by iTSCOM
  • 参加者数:200名

  
 
    
まちづくりトーク01

次世代郊外の魅力:コミュニティ・リビングの夢

(東京大学工学部都市工学部 教授 大方潤一郎氏)

1920年から郊外に向けた電車が走り始め、特に1960年以降に急速に郊外化の波が広まりました。現在では1都3県に3500万人くらいの人が住んでいます。2005年頃からはこれが逆転して「都心回帰」の時代に入ってきています。都心から遠いところほど人口の減りが激しい状況で、高齢化がどんどん進んでいくことが予想されます。 このような状況をうけ、通勤混雑は劇的に改善されるだろうと思われますが、逆に、現在の公共交通サービスの水準が維持できるのだろうか、ということが課題になります。交通パターンも、地域内移動、隣の地域への移動といった非通勤移動が増えることが見込まれ、放射状移動よりも横や、斜めの移動のサポートが重要となります。


 
東京大学工学部都市工学科 教授大方潤一郎氏

ではどういう風に、次世代の街づくりを進めていくべきか。まず「エイジング・イン・プレイス」=「すみなれた場所で一人暮らしになっても最後の最後まで自立して楽しく尊厳をもって生きて死ぬこと」のための取り組みが必要となります。これには、単に空間的なことだけに留まらず、街の仕組み全体を変えていかないといけません。バリアフリー対応も重要ではありますが、それだけでは人は元気になれない。「コミュニティリビング」という考え方がありまして、地域のなかでの高齢者のコミュニケーションを実現することが必要とされています。1日1度は外に出て誰かと触れ合う、歩く、外の景色をみる、楽しいことがある、ということの整備が、空間的な整備と並んで重要だと考えられます。
   
        
 
まちづくりトーク02

まちを楽しむ・伝える・もっと好きになる!

(東京理科大学理工学部建築学科 准教授伊藤香織氏)
 

最初にシビックプライドという言葉について、説明させてください。「シビックプライド」とは「都市に対する誇りや愛着」という意味で、「郷土愛」に近い概念ですが、少し日本語に訳しにくいところがあります。特徴的なのは、自分自身が関わっているという「当事者意識」に基づく自負心の存在です。
たとえばイギリス・バーミンガムのシビックプライドキャンペーンでは「you are your city」というキャッチコピーが掲げられました。シビックプライドの概念がよく表現されていると思います。実はこれは街の美化キャンペーンです。自宅でガムやタバコのポイ捨てする人はいないでしょう。でもそれを街でやってしまうとすれば、街を「自分の場所」だと思っていないからではないでしょうか。そこで、そこでバーミンガムでは、「ゴミを捨てるな」と言うのではなく「あなた自身があなたの街です」と呼びかけているのです。
シビックプライドを育み、豊かなパブリックライフを作り出すためには、いくつか重要なポイントがあります。たとえば、まちをもっとよく知りたくなるような工夫。「まちを知ると、まちがもっとすきになる」からです。

東京理科大学理工学部建築学科 准教授 伊藤香織氏

「WE LOVE たまプラーザ」という企画を、10年くらい前に私たちが立ち上げたのですが、なかなかひろまらないうちに中断してしまいました。3年くらい前から新たに同名の企画が立ち上がりまして盛り上げようと頑張っています。「まちを活性化したい」「住んでいる人みんながまちを好きになってほしい」という思いのなかで、東急・ヨーカドー・商店街・地域連合自治会などが連携して取り組み、桜祭りや夏祭りなどの場面で積極的に活動しています。一連の取り組みを通じて、街中でいままでバラバラに展開されていたイベント等も、徐々に集約されつつあると感じています。また、時には外部からの評価で自分たちの固有性に気づくこともあります。新潟の上古町商店街は、一時はシャッター商店街となっていましたが、若者たちの出店が相次いで現在では空き店舗がほとんどなくなった事例です。この動きを作り出したのは、福岡出身のデザイナーさんです。学生の頃に古い商店街の雰囲気に惹かれ、上古町で自分たちの店を開きました。商店街の「普通の」店の商品に可能性を見いだし、デザインを加えて新しい価値を与えています。地域の当たり前の風景・ありふれた商品に、外から来た人が「新潟らしさ」を見いだして、新しい「新潟らしさ」を生み出したことが活性化につながったと言えます。

まちを伝える媒体や方法はいろいろとあります。「あなた自身があなたのまちなのです」ということを意識することから始めてみませんか。

   

◎まちづくりディスカッション
Re郊外:何を目指し、どう行動するのか

  • 司  会:田島 邦晃 氏(東京急行電鉄株式会社 都市開発事業本部 事業推進部)
  • パネラー:秋元 康幸 氏(横浜市建築局企画部 部長)、松本 茂 氏(たまプラーザ連合商店会中央商店街副会長)、関 哉子 氏(青葉区美しが丘地区 民生委員 主任児童委員)、大方 潤一郎 氏(東京大学 工学部 都市工学科 教授 )、伊藤 香織 氏 (東京理科大学 理工学部 建築学科 准教授)、東浦 亮典 氏(東京急行電鉄株式会社 都市開発事業本部 企画開発部 統括部長)

司会
「Re」という言葉は、リノベーションだったりリニューアルだったり、そういった意味合いを込めた言葉となっています。新しい郊外の実現にあたって、何を目指してどう行動するか。来場者のアンケートの「将来に向けて気がかりなこと」として挙げられた項目のなかから、より会場の皆さまの関心が高い「高齢化」と「若者の参加」についてディスカッションしたいと思います。
 

1)高齢化について


我が家では10代から70代までの3世代が同居していて、夕食時にいろいろな情報交換があります。まちでもそういうことができたらいいと思います。いま「美しが丘カフェ」という名前で地域の方が集まって話をする場を設けていますが、小・中学生の保護者の方や、60〜70代の方、中学校の校長先生など、いろいろな方が集まっています。昔だったら家で話していたようなことを、外で情報交換する時代になっていると思います。

大方
介護システムが充実してきましたが、介護されるようになる前の健康づくりが大切です。外に出て娯楽があることが重要で、市やNPOも、コミュニティカフェのようなものを設けようとしています。その上で、出かけていきやすいようにバリアフリーにするのがよいでしょう。バリアフリーは住宅改修だけでは中途半端で、東急さんや市と一体になって進めていく必要があります。横浜市であればバリアフリー条例を活用しながら進めるべきだと思います。

伊藤
マッチングなどの取り組みも始まっていますが、若い世代に料理を教えるとか仕事の経験を教えるとか、高齢者が活躍する場をつくり、コミュニティのなかで役割があることが重要だと思います。経験豊かな高齢者の方がいらっしゃることもまちの資産のひとつと捉えられます。

松本
大方先生がお話された「エイジングインプレイス」「コミュニティリビング」というのは、私たちもひとつのキーワードだと考えています。また、たまプラーザは地域外の人からも知られている住宅地であり「シビックプライド」の考え方も重要です。公・民・企業の連携で、郊外住宅地再生のやぶにらみの状態から脱皮して物事を進める必要があり、私としては「WISEシティ」というコンセプトを掲げたいと思います。生活者目線でのWellnessが最初にきたうえで、そのあとに、ICT& Intelligence、Smart & Sustainable、Ecology & Energyという概念です。 日本の経済を支えてきた団塊の世代の方への期待として、今まであまり地域に関わってこなかった方々が、地元に入ってきてくれると良いと思います。そういう取り組みに参加してくれる人を探し出すのも今回の活動の目標のひとつだろうと思っています。

秋元
行政はいままでハードだけの取り組みを進めてきましたが、場所の活動に合わせた一方的ではないバリアフリー対応が必要だと感じました。地域への参加については、入り易いところから取り組んでもらい、そのなかで地域のことを徐々に考えてもらう仕掛けも重要だと思います。そうすることで、楽しみながら地域のことを考えていけるようになるのではないかと思います。

  
  

2)「若者の参加」について

伊藤
みんながみんな、地域参加に積極的ということはありません。だから、さきほど秋元さんがお話されたようにいろいろなレベルでの参加のきっかけと方法をつくることが必要だと思います。また、これはいろいろなところでお話していてなかなか実現しないのですが「都市情報センター」を是非つくってほしいと思います。

松本
「WE LOVE たまプラーザ」という企画を、10年くらい前に私たちが立ち上げたのですが、なかなかひろまらないうちに中断してしまいました。3年くらい前から新たに同名の企画が立ち上がりまして盛り上げようと頑張っています。「まちを活性化したい」「住んでいる人みんながまちを好きになってほしい」という思いのなかで、東急・ヨーカドー・商店街・地域連合自治会などが連携して取り組み、桜祭りや夏祭りなどの場面で積極的に活動しています。一連の取り組みを通じて、街中でいままでバラバラに展開されていたイベント等も、徐々に集約されつつあると感じています。


荏田地区の主任児童委員の協力を得て、たまプラーザテラスにて子育て世代のための子育て広場の取り組みを進めています。近隣の他地域とも連携して展開するようになり、この会場(テラスホール)が一杯になるほどの親子が集まっています。積極的な広報はしていないのにこれだけたくさん集まっているのは、やはりみなさん、親子で出かけられる場所が欲しくて、お友達づくりや情報交換をしたいと思っているのだなと感じました。

大方
やりたいときにやりたいことをやるという若い人が入りやすいサークル型の取り組みも必要です。女性は子育てからまちづくりに関心をもち始める場合が多く、そのタイミングで上手に参加を促すと良いと思います。 あとは、若干の活動費を確保することも大切なことです。紙代・印刷費などはちょっとしたコストですが、地域活動の参加者が自腹で払うかたちが続くと、なかなか活動がしにくくなっていくものです。
  

まとめ

司会
「高齢者単身世帯の比率が増えていくなかで、ディスカッションテーマでも「若者の参加」に関心が集まったのは、やはり高齢層ばかりでは困るという意識の表れだと感じました。これからは、街に「多様性」をゆるす懐のひろさが必要なのだと思います。
そして、その「多様性」が「混じり合う、混ざり合う場所と機会」が必要であろうという議論があったと思います。また、伊藤先生がおっしゃられた「誇りと責任は表裏一体」という言葉がとても印象に残っていまして、「プライドが持てるまち」にすることが必要だと思います。
最後に、「WE LOVE たまプラーザ」キャンペーンなど含めて、イベントなどが積極的に展開されている「ライブ感のある街づくり」が必要で、何かが起きる期待感が求められていると思います。この4つのポイントの頭文字をとると「たまプラ」になりますが、こういったちょっとした語呂合わせのような。イタズラごころや企みをもって、楽しく進めていく、ということも街づくりにおいては大切なことなのかなと思っています。

た「多様性」
ま「混ざり合う場所と機会」
プ「プライドが持てるまち」
ラ「ライブ感のある街づくり」

今後の動きですが、モデル地区の美しが丘1〜3丁目の全戸を対象に、街、暮らし、コミュニティなどについてアンケートをとらせていただきます。また、9月〜12月に4、5回程度のまちづくり構想策定ワークショップを開催予定です。今回の取り組みに向けて、横浜市副市長より、「規制緩和も視野に入れていく」という意気込みのお言葉をいただき、大変感銘をうけました。これからも、より多くの方にご参画いただければ幸いです。

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