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イベントレポート

2012.11.21(水)

第2回 次世代郊外まちづくりワークショップ 将来の課題を把握して未来の物語を描こう

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2012年10月21日、次世代郊外まちづくりワークショップの第2回「将来の課題を把握して未来の物語を描こう」を、たまプラーザテラス・プラーザホールにて開催し、前回と同様の70名の住民のみなさんにご参加いただきました。戸建て住宅地にお住まいの方、新しい分譲マンションに最近引越してこられた方、団地にお住まいの方などモデル地区内のさまざまな地区の方々にご参加いただき、積極的で楽しい雰囲気のワークショップになりました。

はじめに、10月6日に行われた第1回ワークショップで挙げられたまちの魅力と問題点について石塚デザイン事務所の石塚所長から簡単なまとめと説明。続いて住民の年齢構成や児童数の変化、高齢世帯の割合の変化や建物の築後年数など、まちの変化についてデータをお話しました。これらの内容を踏まえて、未来の物語をつくるグループワークに入ります。

グループワーク(前半)

グループは、参加者の皆さまに第1回ワークショップ終了時に、「豊かさ」、「暮らし」、「住まい」、「仕組み」、「土台」の5つのテーマを選んでいただき、テーマごとに全部で12のワーキンググループに分かれています。

住環境や街並み、建替えや住みかえについて関心の高い方は「住まい+土台+仕組み」がテーマの1グループから4グループ。子育てや医療・介護、交通や防犯などに関心の高い方は「暮らし+仕組み」の5グループから8グループ。コミュニティの形成や地域交流、文化などに関心の高い方は「豊かさ+仕組み」の9グループから12グループ。今回初めて参加された方は、年代やお住まいの地域、参加している地域活動などの事前の情報を元に、それぞれのグループに分けさせていただきました。また、市民活動やまちづくりへの参画、まちの運営の仕組みなど、まちづくりを行なう上ですべてに通じる「仕組み」に関しては、全てのグループに共通のテーマとしました。

前半のグループワークは「このまま何もしないと10年後どうなっているか考えよう」というテーマで、第1回ワークショップで出された意見を振り返り、このまま10年後を迎えるとどうなるのかをイメージしながら、気がかりな点や可能性を考えています。たとえば、以下のような内容が話題にあがっていました。
 


  • 高齢化、相続に伴い、現在の敷地が大きな戸建住宅を維持できるか不安。住み替えが進み、土地を分割して売ることが増えているため、街並の美しさが失われる可能性があるが、若い世代がいなくなったり、空地、空き家が多いよりはいいような気もする。
  • 個人所有で合意形成の難しいたまプラーザ団地の今後が気がかり。
  • 団地や緑は美しが丘のシンボル。老朽化、高齢化した団地をどうやって将来に継承していくのか?、地域全体で考えたほうが良いのではないか。
  • コミュニティバスを走らせてほしいが、実際にどれぐらい利用者がいるのか心配。継続できるのか。
  • 徒歩5分圏内に買い物できるお店やコンビニ、レストランがない。現在の建築協定のままだと美しが丘3丁目にはお店を作ることができない。高齢化が進むと駅前まで行くのも大変になってくる。徒歩圏内にお店ができるよう、ルールの見直しが必要ではないか。
  • 子どもにとっては団地の街並み自体が公園のような遊び場になっている。貴重な場所なので大切にしたい。
  • 建て替えをするなら高層マンションがいいと思う。一方で、高層マンションが建つと、せっかくの自慢の景観が変わってしまうとの意見や、団地再生と社宅再生の連携の可能性はないだろうか。
  • 高齢者の孤立や地域や世代間のコミュニケーション不足が気がかり。地域住民が交流し、活動し、コミュニケーションが活発に行われる場が必要。

 

高齢者、会社員、主婦、学生など、さまざまな立場の人が、それぞれの視点からのまちの気がかりを話し合いました。どのグループも休憩時間になっても話が尽きず、白熱した議論が続きました。みなさん、気がかりなことが思いのほかたくさんあることに驚いていました。一方で、こうしたらいいのではないか、こうしていきたいというお考えも、ひとりひとりがお持ちのようでした。
  

グループワーク(後半)

5分間の休憩を挟んでの後半のグループワークは「笑顔が広がる将来の物語をつくろう」です。問題点から解決策を導くだけではなく、理想の将来像をイメージして、まちの新たな魅力を創造するワークです。未来の物語の主人公を設定し、タイトルやテーマを決めて具体的な物語を作ることで、みなさんが気がかりに思うことをどう解決していくのかという道筋やまちの将来像を考えます。

たとえば4グループの創作した物語のタイトルは「たまプラーザ移動式マルシェ+社宅・官舎・団地改造プロジェクト」でした。主人公はたまプラーザに住んでいる60〜70代の夫婦。お父さんがリタイアして地域デビューをどうしようかと考え始めた時期で、子どもは結婚して、たまプラーザ団地に住んでいます。歩いていける距離にスーパーや商店がないため、駅前までわざわざ出かけなくてはならない買い物がつらく感じられるようになっていました。本当なら近くにお店ができるのがいちばんいいのですが、建築協定との関係もあるため、4グループは移動式のマルシェが始まるという物語を作りました。行政任せにせず、自分たちでマルシェを運営する点がポイントです。マルシェを開く場所をきれいにしたり、運営するボランティアグループを作ることでコミュニケーションの場ができあがって、お父さんも無事地域デビューを果たします。家の近くでマルシェが開かれることで、遠くまで買い物に行く必要もなくなって便利になるというお話でした。

前半の問題点を挙げていくワークでは少々気が重そうだったみなさんの表情が、後半は一変して明るい表情になっていました。前向きに未来を考えることはとても楽しいことです。そして前向きな気もちが、問題点の解決に繋がっていきます。


最後に各グループの物語のタイトルを発表しました。


1グループ:「育じいのマンション建て替え作戦」
主人公:2丁目のマンションに住む60代夫婦
建物の高さ制限を緩和することで、等価交換でのマンション建て替えを実現。1階部分を地域の人が集まるカフェやレストランにする(若い世代の雇用にも繋がる)。マンション建て替えによって、住宅選択の多様化が進み、家族や友人とスープの冷めない距離で居住することができるようになる。


2グループ:「Kさんをたまプラに呼び込め!」
主人公:36歳男性、港区へ通勤
奥さんの実家がたまプラーザにある。祖父母が高齢になってきたため近くに住みたいが、通勤問題や子育て環境が気になり、踏み出せない。しかし子育て支援や高齢者支援などの地域活動が活発になったことで、実家の隣の空地に家を建てて移り住む決意をする。子育て共稼ぎ世代が暮らしやすいまちになる。


3グループ:「70代以降も住み続けられるまち〜地域ポイントの仕組みづくり〜」
主人公:戸建て住宅に住む70代夫婦
奥さんが認知症になり、介護が大変で引きこもりがちな男性が、地域のために活動すると貯まる”地域ポイント”でさまざまな地域サービスを利用。介護の負担が減り、暮らしを楽しめるようになる。田園都市線沿線に住んでいた息子家族が、地域活動に参加することでまちの良さをしり、たまプラーザに引っ越してきて同居を始める。


4グループ:「たまプラーザ移動式マルシェ+社宅・官舎・団地の改造プロジェクト」
主人公:たまプラーザ(戸建て住宅)に住む60〜70代の夫婦
高齢になって、地域デビューやこれからの暮らしをどうしていくかを考え始めている。歩いていける距離にお店がないため、移動式マルシェを始め、高齢者が買い物しやすい環境ができる。また、自分たちの手で運営することで地域の友だちができる。


5グループ:「美しが丘フラワータウン・プロジェクト〜団地の再生からまちが華やかに!〜」
主人公:美しが丘の団地に賃貸で住む30代の夫婦
団地建て替えを機に、地域の交流スペースや介護施設ができ、コミュニティ・ビジネスが活発になって地元のお店で買い物する人が増え、雇用も増える。現在もあるフラワータウン・プロジェクトはまちのシンボル的取り組みとして長年続けられ、美しが丘は暮らしやすいまち、住みたい町ナンバーワンになる。


6グループ:
「みんなが世代を超えて友達になれるまち〜独身女性が公園作りに参加して若い男をGet!〜」

主人公:独身女性(60代)
還暦にさしかかる独身女性が「(仮称)まちなか集いの場づくり作戦」への参加をきっかけに、若い男性と知り合って結婚するというストーリー。地域活動を通してさまざまな世代、性別、立場の人が友だちになり、子育て世代も高齢者も安心して住み続けられるまちになる。


7グループ:「連携が心豊かなまちを創る」
主人公:美しが丘の一戸建てまたは団地に長年住む70代のふたり暮らしのご夫婦
奥さんが倒れて、ご主人が介護をする。介護ボランティアや民生委員、メンタルケアの専門家による巡回など、介護サービスが充実することで、精神的にも肉体的にも介護生活の負担が減っていく。行政がi-padを無料で貸し出すことで、情報交換や発信ができるようになり、家での楽しみが増える。


8グループ:「家族の幸せは地域活動から」
主人公:40〜50代の子どものいる夫婦
仕事ばかりしていたお父さんが、趣味のサークルや緑のボランティア活動をきっかけに地域デビューする。お母さんはオープンハウスやイベント開催、防災ネットワーク作りを始める。地域活動がどんどん活発になり、ふたりは地域でも頼られる存在になる。


9グループ:「夢のリタイアライフ」
主人公:美しが丘の一戸建てに十数年前に引っ越してきた50代のご夫婦
退職したあと、建築士のスキルと料理好きを活かしてシャッター街の空き店舗をリノベーションし、地域通貨での支払いもできる立ち飲み屋をオープン。地元の人が気軽に立ち寄るようになって繋がりが生まれ、地域通貨の仕組みも活発化して近所で気軽に助け合える仕組みができあがる。


10グループ:「家政婦は見た! 団地夫婦の未来への歩み」
主人公:団地に住む50代の夫婦
趣味や特技、地域活動を通じて、多世代との交流が生まれる。できることリストの作成や高齢化に伴う見回り体制の整備など、さまざまな仕組みが充実していく。それぞれの世代が地域に対して自分の役割を得ることで生きがいを見つけ、まちがより活性化していく。


11グループ:「大作戦! 美しい丘でアモーレ・パーティ」
主人公:貿易会社をリタイアした60代男性、子育て真っ最中の40代の女性、自治会の役員の70代女性、たまプラーザで働く30代男性
地域活動についてさまざまな思いをもつ4人の主人公が、まちの繋がりを作る難しさに直面しつつも何か一緒にやれることがあるはずと、誰でも気軽に参加できる地域パーティ”アモーレパーティー”を企画する。このパーティをきっかけに地域の人々の繋がりができ、地域活動へも広がっていく。


12グループ:「世代間で共有・支え合い」
主人公:単身で美しが丘3丁目戸建て住宅に住む高齢者
高齢になり、たまプラーザから引っ越そうかと悩んでいたが、固定資産税の優遇措置、大学と連携したボランティアセンターや見守り活動の活性化によって、住み続けたいと思えるようになる。また、若い人たちがボランティア活動に関わることで、若い住民が増え、憧れられるようなまちになる。


タイトルの付け方や内容もバラエティ豊か。どれもとっても個性的で内容について詳しく聞きたくなるものばかりでした。

 

参加者の感想

Mさん(美しが丘1丁目在住 40代・女性)
中学校の学校運営協議会に東急や横浜市の方がきてくださって、ワークショップをやるので参加してくださいと言われて、今回初めて参加しました。いろいろな年齢や立場の方がいて、たくさんの話が聞けて面白かったです。話すことは楽しいことだし、将来、これで本当にまちが変わったら面白いと思います。

Mさん(美しが丘1丁目在住 40代・女性)
初めての参加です。世代の違ういろいろな人たちと出会えたり、同じような考えをもっている人もいるんだなとわかって良かったです。普段、周りの人たちとまちについて語るっていうことはほとんどありませんが、こういうふうに話しているとなんだかできそうだな、現実になるんじゃないかなと思えてきます。それに自分も地域のことに参加できるかもしれないという気もちが湧いてきました。市役所や誰かにおまかせしておくのではなく、ひとりひとりが自分ごととして、どうやったらいいまちになるのかを考えて実行していくのがいちばん大事だと思いました。

Dさん(美しが丘3丁目在住 60代・女性)
前回から続けて参加しました。フォーラムで話を聞いた時から興味をもち、ぜひとも参加じゃなくて参画したいなと思っています。1回目、2回目と順調に前へ進む議論ができていますね。たとえばいろいろなグループで団地の将来像の話題が出ていますが、空論で終わらせちゃいけないんですよね。今回の取り組みの中で仕組みを具体化していき、実行計画をもたないといけないと思っています。

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